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- 第3回
私は「SかMか」の会話同様、よくある心理テストというのも大嫌いだし、まったく信用していません。
「道があります。その道はまっすぐですか、曲がってますか。やがて川に出ます。川には橋がかかってますか、かかってないですか。川の向こうには家があります。煙突がありますか、ないですか」といった類いのテスト。
こんなんで深層心理がわかるはずねえってえの。
と思いながら、「道はまっすぐで、川には橋がかかっていて、家には煙突があるな」と答える私です。
本気で信じるのはどうかと思いますが、時間潰しやコミュニケーションの導入としては悪くないですから。
てっきり私は「SMマトリックス」も、そういった飲み屋の会話にあるような、あるいは雑誌やテレビによくあるような、薄っぺらなテストだと思っていたのであります。
●他者との関係性が行動パターンを決める
いざ「ロフトプラスワン」に行って、イベントの前に私もテスト用紙に書き込んでいるうちに、「これって本格的な心理テストみたいだな」と思い始めます。
本格的な心理テストというのは、カウンセリングの際にやらされる行動や性格を見るテスト のことです。
私もやらされたことがあります。
「SMマトリックス」は40問もの質問に答えなければならず、これだけ緻密なものをやって初めて人の心理は漏れ出します。
月花さんが私にうまく説明できなかったのはもっともです。
説明がとても難しいのです。
質問用紙に書き込んでいるうちは私もよくわかっていなかったのですが、イベントの前に考案者である心理カウンセラーの尾谷幸治さんの話を聞いていくうち、「そうか、そういうことか」と膝を叩きます。
イベントが終わる頃にはすっかり虜ですよ。
「SMマトリックス」はSMからヒントを得ていて、そのフレームや用語を使いながらも、テーマになっているのは広く人間の行動が対象です。
そのとらえ方が今までのものと違うのは、他者との関係性を組み込んでいることです。
この軸が入り込んだことによって、今まで整理できなかった人間のパターンが見えやすくなりました。
具体的にはまた次回。
文 = まつざわくれいち/1958年生まれ。『エロスの原風景』(ポット出版)、『風俗お作法』(小社)など著書多数。
イラスト = 友沢ミミヨ