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- 第4回
つまり、私は私の中に「相手を感じさせること」の定義がはっきりあって、その定義内でしか欲情できず、本当のところ、相手が何を欲しているのかはどうでもいい。
私もまたエゴイスティックなエロを追求しています。
エゴエロであり、「SMマトリックス」的に言えば典型的なSです。
こう説明してもなおわからないかと思いますので、あとは「SMマトリックス」が本になったら読んでいただくとして、ここで重要なのは、自分と他者の違いを認識しておくことです。
●行動の目的と理由を理解する
人は自分の性のありようを疑わないものです。
たとえば、売買春や風俗産業の議論をしていると、「そんなことは私はできない」と言い出すおバカな人がいます。
誰もこの人ができるかどうかを問題にはしていないわけですが、「自分ができないから禁止しろ」と短絡的な発想をする人たちが実際にいます。
あるいは昨今問題になっている漫画表現に対する規制も同じで、自分が理解できないから規制していいと考える人たちがいます。
さらには「隠すからいいのだ」なんて言い出す人までいます。
法規制を免ずるのに個人の趣味はどうでもよくて、それが社会に悪影響を与えることを科学的に証明しない限り、規制はすべきではない。
表現の自由というのはそういうもの。
価値があるなしを誰かが判断して、規制していいとか悪いとかを決定してはならない。
「隠すのがいい」というなら、隠したものを買えばよく、この人の趣味に社会全体が従う必要はありません。
なんて話をしだすと止まらなくなりますので、この辺にしておくとして、風俗という場所でも、相手が何を望んでいて、相手がどうしてそういう行動をとるのかを理解することが必要です。
その時に、自分の価値観に相手を当てはめないようにしたい。
当たりまえのことを言っているようですが、「SMマトリックス」を知って、「なんだよ、こいつ。どうしてそんなことにこだわるんだよ」と思っていた他人の行動が、「そっか、原理か違うのか」とやっと理解できて、私は私自身の価値観で他者の価値を量っていた点がなおあったことがよくわかりましたし、自分という存在をとてもよく理解できるようにもなります。
本が出たら是非お読みください。
文 = まつざわくれいち/1958年生まれ。『エロスの原風景』(ポット出版)、『風俗お作法』(小社)など著書多数。
イラスト = 友沢ミミヨ