- 風俗求人てぃんくる >
- コンテンツ >
- 松沢呉一のカシコイおもてなし >
- 第22回
宇多田ヒカルと紀里谷和明の結婚生活が破綻した時に漏れ出てきた話を聞いて、「あ、男女が逆転している」と思いました。
夫は妻に「君にとって僕はいったいなんなんだ」と問いつめたという話があって、こういう発想は今まで男の中にはあまりなかったように思います。
少なくとも、私の中にはないです。
ヒッキーファンの風俗嬢も「ヒッキーは中身が男だから」と言ってまして、宇多田ヒカルは互いに一緒にいたい時に一緒にいられればそれでよく、それ以上の確認が必要がない。
自信があるんでしょうね。
さすがと言えます。
紀里谷和明だって43歳ですから、若い世代ってわけではないですが、宇多田ヒカルみたいなタイプを目の当たりにして、当惑してしまったのでしょう。
「尽くす女」とは無縁ですから。
私の周りはこういう女子が多いため、宇多田ヒカルの言動は理解しやすいのですが、男子の草食化と女子の肉食化が進むと、そのギャップに苦しむ男子が増え、彼らはその解消のために風俗店に行きます。
唐突な展開ですけど、今までも風俗店は、男たちの不安を解消する側面があって、そこが強化されていきます。
すでに書いたように、風俗店に行くのは肉食男子の行動だったわけですが、これからは草食的に風俗店を利用する。
つまり、自信を取り返し、不安を解消するために風俗店に向かうわけです。
おそらく若い世代ほど、その側面を求めます。
今までも「風俗店に来るおっさんはわかりやすくセックスを求め、若い世代は恋愛をともなうセックスを求める」なんて言われていたわけですが、単に風俗嬢と疑似恋愛をするのでなく、今後は女性がやってきたような恋愛を求める。
不安解消のための恋愛です。
たとえばキャリアのある風俗嬢に「あなたのような人に出会えてよかった。好きになりそう」と言って欲しがる。
そんな要望に応えるわけにはいかないですが、「自分の性的能力を褒めてくれた」といったことで安心する。
つまり、ここまで書いてきたような不安解消のための接客術が、若い世代にはいよいよ必要とされるってことです。
長々と書いてきたわりに、ありきたりの結論ですまん。
文 = まつざわくれいち/1958年生まれ。『エロスの原風景』(ポット出版)、『風俗お作法』(小社)など著書多数。
イラスト = 友沢ミミヨ