風俗指導員・松沢呉一の店外講習
風俗取材に携わって10余年。ひたすら「エロ街道」を歩き続ける著者が、お店スタッフや女の子との交流を重ねて得た、風俗業に関するさまざまな知見をここに開陳。第4回目のテーマは、似て非なるものとよく言われる水商売と風俗業の違いについて。前・後編でお届けします。
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 昨年の春、千葉県西船橋にある人妻ホテルヘルスの女性店長にインタビューした。この人は現在41歳。20代から30代を通して、新宿でクラブホステスをやっていて、風俗店のスタッフになったのはこの店が初めてだが、20代半ばの時に客の売り掛けがこげついて、その返済のため、ホステスを辞めてホテトルで働いていたことがある。金はすぐに返したのだが、ホテトルの日銭が魅力で、しばらくはホテトル専業に。水商売に復帰して以降も、誰にも言わずにホテトルで働き、30歳になるまでの足かけ5年ほど、ホテトルで働き続けた。

 したがって、水商売のことも風俗のこともよくわかっていて、その両者を比較した話が非常に面白かったのだが、そのインタビューでは文字数が足りず、もっとも面白かった話を掲載できなかったため、ここで紹介したい。
 よくある話だが、水商売で人気があっても、風俗で人気が出るとは限らない。また、水商売で芽が出なかったコが風俗でもお茶を挽きっぱなしとは限らない。逆もまた真で、ヘルスでナンバーワンのコがキャバクラに移り、ヘルスのようにはうまくいかず、あっという間に戻ってくることがある。どっちでも使えないのはたくさんいそうだが、どっちでもナンバーワンになった人は、いないわけではないにせよ、極稀な存在かと思う。水商売と風俗は似て非なる世界なのである。

「クラブホステスは計算できることが成功する秘訣です。お客さんに会った瞬間に、この客はどこまで金を引っ張れるかを計算する。こういうことを言ったら、相手がどう出るかも全部瞬時に計算する」と彼女。

 クラブに比べるとプロ意識が希薄で、希薄であることに売りがあるキャバクラだとここまでの計算は必要ないだろうが、彼女がいたのはクラブである。この計算は当然自分自身の見せ方にも反映される。相手が望む自分を演じ、ウソやハッタリ、思わせぶりも重要な道具なんである。

「体力的には大変ですけど、風俗では計算が必要ないから、その分、精神的には楽ですね。“60分いくら”って定価が決まっているから、その間に満足させることしか考えなくていい。満足してくれたらまた来てくれるってだけです。使わせられる金額も見えているから、計算してもしょうがない。ところが、クラブのお客さんだと、“この人はどこまで使えるのかしら”っていうのがすぐにはわからない。わからないから常に計算をする」

 風俗でも「週に1回来るかもしれない」「月に1回来るかもしれない」「3ヶ月に1回くるかもしれない」「二度と来ないかもしれない」という程度には可能性の幅があるが、それを見極めたところで、一人の客が1年で自分に落とす金は、上限でせいぜい100万か200万というところだろうし、週に1回から2 回、飽きずに通い続けさせるには、長期の計算ではなく、1回1回のプレイ内容にかかってくる。しかも、風俗ではその日の気分、その日の体調如きで左右されてしまって、計算通りに客は動かない。
 対して、水商売の客は行動が固定され、年単位で週に何度か通うことが期待できる。また、会社の接待で店を使ってくれれば、年間数千万円という単位の金を落としてくれることだってある。指輪やバッグ、時計、車を買ってもらうのもホステスの仕事のうち。果ては、店を持たせてくれたり、マンションを買ってくれることだってある。長期では億という単位の金だって引っ張れるかもしれないのだ。しかし、計算を間違えれば、たった1回でおしまい。

「風俗でチップをくれるお客さんがいないわけじゃないけど、くれたとしても数万円でしょ。そんなの計算したってしょうがないけど、水商売だったら大勢の客を連れてきてくれて、一晩で100万円ということだってあり得る。だから計算する。そのための投資として、こっちだって何万円、何十万円もするプレゼントくらい用意する。そこの計算をしておかないと、もらえるものももらえなくなるし、無駄な投資をすることにもなる」

 休みの日に接待ゴルフにつきあうことも厭わないが、これも計算のうちだ。
 正しく計算するためには相手が会社においてどの地位にいて、どの程度の将来性があるのか、あるいはその会社の売り上げや株の状態だってチェックしなければならない。

 出勤する前に「朝日新聞」と「日経新聞」を家で読み、出勤途中に「ニューズウィーク」を読んでいるホステスさんが現にいる。昔は料亭で芸者を横に置いて政治家たちが議論をする料亭政治が行われたものだが(今もかな)、それだけではなく、政局に関する相談を芸者にする政治家までいたと言われる。今も「君はこの件についてはどう思うかね」と客に問われて、答えられるくらいの知識があった方がいいわけだが、それだけではなく、相手の値踏みをするためにも、さまざまな情報を得ていた方がいいのである。

 風俗とは全然違い、ホステスさんたちがハッチャキになるのも当然かもしれない。

「上から下まで全部作り込んでいて、ウソで固めているようなのもいましたよ。“あんた、人間なの?”ってカンジでしたよね」

 ここまでできるのは、金のためもあるだろうが、計算通りに自分を作り込んで動かしていくこと自体に快楽を得られるタイプの女たちってことなのだろう。
「風俗ではそれよりも素がいいコの方が受けます。顔もスタイルもいいし、服やお化粧のセンスもいい。頭もよくて、非の打ち所がないタイプは水商売ではよくても、風俗では案外ダメです。きれいというより、かわいいタイプが受けます。見た目も性格も。接しやすいというか、気取らないというか」

 プライドという言い方をしてもいいかもしれないが、プライドが高く、自分を晒さず、人を寄せ付けないタイプは風俗では受けない。このタイプでも受けるのはSMの女王様くらいじゃなかろうか。

「この店でも、私から見て“このコはいい子だな”“かわいいな”というコが指名されます。松沢さんが気に入ってくれている純ちゃんは、私から見てもかわいいですよ」

 エヘヘヘヘ。ってオレが照れる筋合いじゃないのか(彼女はその後退店)。

「風俗の場合は肌を合わせるから、ウソはバレる。ウソが入る部分があるとしても、どこまでもウソというのは無理でしょ。最終的には肌が合う合わないだから、そこまではウソをつけない。同じプレイをしても、顔や体は好みじゃないのに、どうしても肌が合うっていうことが女の側にもあるように、お客さんの方にも当然ある。自然さのない無理なサービスをいくらやってもダメです。あと、人気のあるコたちは、みんな好奇心が旺盛で、自分自身、エッチなことを楽しむとか、試みることを楽しむタイプです。そういう積極性みたいなものが風俗で言うプロ意識だと思います。純ちゃんはやっぱりそうですよね」

 彼女は自分自身楽しみつつ、「前立腺マッサージを覚えたい。今度やらせてください」なんてことをよく言っている。かといって彼女は人が良すぎて、クラブでやっていけるタイプではない。

「そういうコたちは、自分を自然に晒せば受けるのに対して、水商売は思わせぶりで引っ張る世界だから、いかに本当の自分を晒さないかです。スタートラインが違うんですよ」

 もちろん、それぞれに例外はあって、風俗でも演技派はいて、思わせぶりで引っ張るタイプもいる。ただ、全体としては、このような傾向が確かにありそう。

「水商売でも、“どうしてこの人が……”っていう例外はいましたよ。水商売の場合は同じテーブルにつくし、そうじゃなくても、どんなことをしているか遠くからでも見えるから、それぞれどうして人気があるのか、だいたい納得できるんですよ」
 水商売には詳しくない私でも、接客風景を眺めれば、ある程度は「誰が人気があるか」は見抜ける。事実、キャバクラや私にとっては場違いなクラブに行き、その様子を見て、「あのコ、人気あるでしょ」と言うと、ズバリとまではいかなくても、そう大きくは外れない。

「ところが、私たちが見ても、どうして人気があるのかわからないコがいる。そんなに美人じゃなく、地味で目立たないコなのに人気がある。お客さんとのやりとりを聞いていても、どうってことない会話しかしてない。私がそう思うだけじゃなく、仲のいいコたちも、そのコの人気はわからないって言う」

 これってたぶん「二番手戦略」ではなかろうか。クラブにおいては、「いかにウソを作り上げて、客をその気にさせるか」を競い合うわけだが、彼女は最初からこの競争から降りていて、であるが故に客に強く認知されるのだろう。
「そうかもしれない。彼女には、VIPはつかないんですよ。そういうお客さんたちは、人気があって当然のタイプにつく。どちらかというと、お客さんも地味目な人がそのコを指名してましたね」

 VIPは自分の評価に見合う相手、すなわちナンバーワンクラスを狙う。それがステータスなわけだ。

 しかし、お客さんの中にも、たまたま接待で連れてこられただけで、あるいはもっと気楽な店があることを知らないだけで、クラブの世界のハッタリについていけない人がいて、こういう人たちにとっては、素に近い状態で接客しているホステスの方が楽だ。確実にいるはずのこういう層を彼女は拾い上げていたに違いない。

 さて、ここまではまだしもよく聞く話の範囲である。彼女の話でもっとも感心したのは、風俗と水商売の客の違いについてだ。(以下次回)
ご愛読ありがとうございました。松沢呉一さんの連載は、今後『てぃんくる』誌上でお読みいただけます。9月24日発売の『てぃんくる』289号をお楽しみに!
松沢呉一(まつざわ・くれいち)
1958年生まれ。ライター。音楽から宗教、著作権問題などフィールドは多岐にわたるが、ここ10数年は性風俗産業の取材を中心に活動。その高い見識と飾らない人柄に風俗嬢たちからの信頼も厚く、仕事およびプライベートに関する相談を受けることもしばしば。ときに「風俗指導員」と化している。『ぐろぐろ』、『エロ街道をゆく』(以上ちくま文庫)、『風俗見聞録』、『風俗ゼミナール〈女の子編/お客編/上級・女の子編/上級・お客編〉』(以上ポット出版)、『魔羅の肖像』(新潮OH!文庫)など著書多数。編書に『売る売らないはワタシが決める』(ポット出版)などがある。
松沢呉一

2004.3.16 up

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