風俗指導員・松沢呉一の店外講習
風俗取材に携わって10余年。ひたすら「エロ街道」を歩き続ける筆者が、お店スタッフや女の子との交流を重ねて得た、風俗業に関するさまざまな知見をここに開陳。前回に引き続き、営業メールが苦手なヘルス嬢・さくらちゃんとのやりとりを中心にお届けします。
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(前回の続き)

しかし、こういうフォローの下手なコがいるんである。

知り合いのヘルス嬢から電話があった。その時は取材中で出られず、夜中に電話をした。彼女とはメールじゃなくて電話で話すことが多いのだが、彼女が仕事中だとゆっくり話せないので、仕事が終わったくらいの時間に電話するようにしているのだ。

「どうした?」
「今日、店が暇だったから来てもらいたかったんだよ」
「なんだよ、営業だったのかよ」
「うん、そうだよ」

たしかに私の場合は、思わせぶりなことを言わずに、ストレートに「暇だから来てよ」と営業しても比較的大丈夫ではある。彼女もまたハッキリと物を言うタイプだから、いつも営業電話をしてくる時は、「今日暇だから来てよ」とか「キャンセルが出たから、4時から来ない?」なんて言ってくる。

しかし、この時は、ちょっとガッカリ。だって、夜中じゃ、いまさら店に行くこともできない。どっちみちその電話の役目は果たせなかったのだから、この場合は、「声を聞きたくて電話したんだよ」なんてウソを言ってくれた方がよかった。彼女のキャラからして、照れくさくてそういうことを電話では言えないのだろうが、だったらメールにした方がいいだろう。こういうコが微妙な「オヤジの乙女心」に対処するにはやっぱりメールの方がいいみたい。
「私ももっとアドレスを教えたり、聞いたりして、営業した方がいいのかな」とさくらちゃん。

「メールを送ることで、面倒も増えるから、それを引き受ける覚悟があるかどうかだよね。下手に電話番号やメルアドを教えると、舞い上がってしつこくなる客もいるし、そこから身元がバレてしまうことがあるから、ちゃんと相手を見た方がいいだろうね。アドレスに本名が入っているコもいて、身元がバレやすくなるから、教えるなら、態勢を整えてからの方がいいよ」
「お客さんは、そんなにアドレスを教えてくれるものなの?」
「それも人によるだろうね」

営業をしようと思って、片っ端からアドレスを聞いたが、教えてくれる人の方が少なかったと言っているコもいた。奥さんや彼女が携帯電話をチェックするため、教えられない人も多いのだ。

「あくまで飲み屋の営業であるフリをしなければならないとか、平日の昼間はいいけど、夜は送れないとか、それぞれに事情があるから、間違えないようにしないとね。露骨に営業であることを主張する内容でもいい人と、それを避けた方がいい人もいるから、相手によって内容も考えないと」
「そうかあ、面倒だな」
「オヤジの乙女心をどうくすぐるかだから、心理戦だよ。客としてはメールを送る以上、返事が欲しいわけじゃないか。でも、中には休みの日は客からのメールに返事しないコがいるんだよね。カレシとデートしているか、休みの日は仕事のことを考えたくないタイプ。でも、そうすっと、客としては“このコはカレシがいるんだな”とか“結局メールは仕事かよ”なんて思うから、できれば休みの日もちゃんと返事をした方がいいよ。毎回じゃなくてもさ」
「やっぱり大変だなあ」

一方に休みの日はメールの返事を出さないのがいるだけに、「今日は休みだったから、友だちと買い物に行っていた」なんて「休みの日メール」を出すと、客としては一歩踏み込んだ気にもなる。こんなん、カレシのことを「友だち」と言っておけばいいだけだ。
  私の経験では、こんなメールが強く印象に残っている。彼女は高熱を出して入院することになったのだが、病院に行くところから始まって、退院するまでを逐一報告してくれた。精密機器のないところではメールが送れるようになっている病院だろうから、常連客皆に送っているかもしれないのだが、入院という極私的な行為においてもメールを送ってくれたことで、強い親近感を抱いた。「見舞いに行く」とメールしたら、あっさり断られたのだが、「ボロボロになった顔を見られたくない」との言い訳がまたかわいい。

まったく逆に返事を送らないテクもある。風俗嬢と客の関係ではない恋愛テクだが、自分に気があると確信をもてた相手には、わざとメールの返事を遅らせる男や女がいる。特に今まではマメに返事を書いていたのに、ある日突然返事が来なくなる。これで相手はジレて、思いはつのる。その翌日、「ゴメンちゃい。昨日は一日ゴロゴロしていて、携帯を見てなかったんだ」なんて返事をすると、「ああ、よかった」と相手はホッとして、気づいてみたら、相手の術中にまんまとハマッているわけだ。

この場合は、その前にマメに返事をしておく必要があるので、面倒がために返事をしないのとは全然違う。水商売だと、ここまでやっているのもいそうだ。

「でも、お客さんにメールなんて送ると迷惑じゃないかって思ったりもする」と営業メール未体験のさくらちゃんは、その遙か手前で躊躇している。
 
  いつもこちらからメールして、あちらは返事をくれるだけのコがいて、こっちとしてはいささかの寂しさを感じていたのだが、ある時彼女はこう聞いていた。

「メールを松沢さんに送りたいと思うんだけど、そっちの事情がわからないから、迷惑じゃないかと思って送れなかったんですよ」

人によっては迷惑なこともあろうが、私の場合は24時間大丈夫だと説明して、以来、時々あちらからも送ってくるようになった。

「電話よりメールがいいのは、それほど時間を食われないのと、無視できることだよね。電話だと、ウザいと思いつつ、つい出たりするけど、メールだと無視していいからね。女のコらとしても、返事が来ない相手はどんどん切っていけばいい」
「ウザい相手もいるんだ」
「たまにね。こっちは興味がないのに、あっちが積極的で“アドレスを教えてください”と言ってきて、頻繁にメールを送ってきて、ウザくなることもあるけど、無視すればいいだけなので、電話に比べれば害はないよね」
「ああ、そうか、私もやってみよ」

なんてことをさくらちゃんに講義したんだが、肝心なことを教えるのを忘れていた。彼女はほっとくと、相手を選ばずついエロメールを出してしまいそう。
 
  後日会った時に再度メールの話になった。

「やっぱり私はメールはしない方がいいかもしれない」
「まあな、“マンナメしに来て”って書いちゃいそうだからな」
「最近ね。そういう言葉に気をつけなきゃいけないってことがよーくわかった」

彼女はよく合コンに出ているのだが、いつもあまりモテない。ルックスは悪くなく、幼い雰囲気がありつつも、オッパイは大きい。このタイプが受ける層は確実にあって、5人いれば2人くらいは彼女にアプローチしてもよさそうだ。

「それがね、この間、下ネタを言わない方がいいかもしれないと思って、初めて下ネタを言わずに静かにしていたんですよ。そしたら、みんなに連絡先を聞かれて、翌日から“また会ってください”って誘いが次々と来たんですよ。合コンでこんなモテたの初めてですよ。今までは合コンで下ネタを言うと盛り上がるから、調子に乗って言っていたんだけど、ああいう場で下ネタを言うとモテなくなるってことがよくわかった」

たしかに場を盛り上げる存在としては重宝されるが、つきあう対象、恋愛の対象にはなりにくい。男の中にははっきり「エロ話をする女は嫌い」というのがいるくらいだ。

「そうなんですよ。女のコたちも私には“もっと話して”って煽っていたんだけど、あれって盛り立て役を私に任せて、自分は下ネタを言わない女として、虎視眈々と男のコたちを狙っていたんでしょうね」

このコはたしか23歳だと思うが、23年生きてきて気づくことではない気もする。

「下ネタを言うだけで退くような男はどうかと思うけど、とりあえず、男をゲットするために、下ネタは言わないようにしようって心に決めましたよ」
 
  私自身の失敗談。今まで何度も遊びに行っているヘルスのコからメールがあった。前々から「ソープに移るかもしれない」と聞いていて、「移ったら連絡しろよ」と言っていたので、律儀に連絡をくれ、「いらしてね」なんて吉原の高級店の店名やその店での新しい名前を書いてくれている。

そこで私は「じゃあ、ハメに行くか」と返事を出した。これまで彼女とはハメたことがないから、ハメるのが楽しみである。

そしたら、彼女から「そんな言い方しなくても(泣)」と返事。普段は何言ってもへっちゃらなコで、彼女自身、エロいことをよく言っているのだが、店を移ってすぐ、業種を変わってすぐは不安もあって、なのに「ハメに行くか」ってデリカシーなさすぎ。もう少し彼女の気持ちを考えて、「君に会えるならどこにでも行くよ」なんて書けばよかったと反省した。

乙女心はオヤジにだけではなく、若い小娘にもあるのだ。って当たり前。
ご愛読ありがとうございました。松沢呉一さんの連載は、今後『てぃんくる』誌上でお読みいただけます。9月24日発売の『てぃんくる』289号をお楽しみに!
松沢呉一(まつざわ・くれいち)
1958年生まれ。ライター。音楽から宗教、著作権問題などフィールドは多岐にわたるが、ここ10数年は性風俗産業の取材を中心に活動。その高い見識と飾らない人柄に風俗嬢たちからの信頼も厚く、仕事およびプライベートに関する相談を受けることもしばしば。ときに「風俗指導員」と化している。『ぐろぐろ』、『エロ街道をゆく』(以上ちくま文庫)、『風俗見聞録』、『風俗ゼミナール〈女の子編/お客編/上級・女の子編/上級・お客編〉』(以上ポット出版)、『魔羅の肖像』(新潮OH!文庫)など著書多数。編書に『売る売らないはワタシが決める』(ポット出版)などがある。
松沢呉一

2004.6.15 up

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