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お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!
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仕事のあと、店長と打ち合わせを兼ねて食事をしに行きました。そのとき、お酒が入っていたこともあって、ちょっとした意見のくい違いから言い争いになり、「もう、こんな店やめる!」「それなら明日から来なくていい!」なんてことに……。
でもひと晩寝て、落ち着いて考えてみると、やっぱりお店はやめられない! 店長に電話して謝ったんだけど「もうやめたはず」と突き放されちゃいました。私はこのままやめるしかないの?
- (24歳・口は災いのモト子さん)
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- 酔って店長に「店をやめる」と言った
- 翌日、謝って撤回したが、店長は認めなかった
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第1のポイントは、モト子さんは本当に退職を申し出たことになるのか?ということ。一般に仕事をやめる際には「退職願」などの書面を提出することが多いのですが、法律上、意思表示は口頭でもOK。人事担当者に「会社をやめます」と言った時点で、退職を申し出たことになります。ただしこれは、本人が本気でそう思っている場合の話。モト子さんのケースでは、本気で退職したいと思っていたかどうかは疑問です。
また店長が、バトルの席での発言を言葉通りにとらえたかどうかも問題。法律には「心裡留保」という考え方があります。これは、AさんがBさんに対して意思表示をした場合、Bさんが「Aさんの言っていることは本気ではない」と知っていればその意思表示は無効になる、というもの(民法第93条)。ですから、店長が「モト子は本当にやめる気なんかないくせに……」と思っていたとすると、モト子さんの意思表示は無効。つまり退職を申し出てはいないことになるのです。
第2のポイントは、仮にモト子さんの意思表示が有効だった場合、申し出を撤回できるか?ということ。これは会社の中の店長の立場とも関わってきます。店長は、自分の店の採用業務を任されていますか? 任されている場合は、残念ですが撤回は難しいでしょう。店長には店の人事権があり、退職の申し出を受ける権限もあると考えられるからです。でもそうでない場合は、チャンスが残っています。翌朝、電話をした時点で、社長など人事権のある人に店長が報告していなければセーフ。店長には人事権がないのですから、モト子さんの退職の申し出はまだ正式なものではなく、撤回の余地もありそう。社長に報告したかどうかを確かめ、間に合いそうならすかさず「やめるのやめます!」と主張しましょう。
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- 裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。
イラスト/つぼいひろき