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お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!
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夫が知り合いのAさんと一緒に飲みに行った翌日、Aさんから「貸した高額な腕時計がなくなった」という連絡が……。夫に確認すると、飲んでいるときに一度つけさせてもらったことは覚えているけれど、そのほかのことは酔っていて覚えてない、って言うんです。Aさんからは同じ時計を買い直すためのお金を半額払ってほしいと言われています。夫は、時計を盗んだりなくしたりした覚えはないと言います。それなのに、時計代を半額払わなければいけないの?
- (26歳/よっぱらいの妻)
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- Aさんの腕時計がなくなった
- 夫はAさんの腕時計をつけたが、なくした覚えはない
- 請求額は時計代の半額
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まずはっきりさせなければならないのは、ご主人はなぜAさんの腕時計をつけたのか? ということ。ご主人が「貸して」と頼んだのでしょうか。それともAさんが「つけてみろよ」と勧めたのでしょうか。大切なことなので、もう一度よ~く考えてもらってください。まあ、酔っていたときのことを思い出すのは難しいかもしれませんが……。
仮に、ご主人が「貸して」と頼んだとすると、Aさんの主張は正当です。「貸して」「いいよ」のようなやりとりがあった場合、Aさんはご主人に、返してもらうという前提で時計を預けたことになります。法律上、これを「寄託」といい(民法第657条)、寄託を受けた人には、預かったものを、自分の財産と同じだけの注意を払って保管する責任が生じます(民法第659条)。つまり、ご主人はAさんの時計を預かった以上、しっかり保管してきっちり返さなければならなかったのです。預かったものを返せなかった以上、損害賠償(民法第709条)として、時計の時価相当額を請求されても文句は言えません。
でも、Aさんがご主人に時計をつけてみるように勧めたのであれば、ご主人の責任は軽くなります。この場合、ご主人には時計を預かる意思はなかったと考えられるので、Aさんにも責任アリ。時計の代金を全額請求されることはないでしょう。
ただし、いずれの場合でも、ご主人にまったく責任がないとは言えません。損害賠償をしないためには、Aさんの時計を返したことを証明しなければならないからです。残念ながら「なくした覚えはない」程度では、証拠として弱過ぎ。ご主人が時計を返したことを証言してくれる目撃者でも出てこない限り、時計代の一部または全部を負担することは避けられないでしょう。
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- 裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。
イラスト/つぼいひろき