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お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!
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最近、行きはじめた美容院の美容師さんから、ケータイに電話がありました。お店に忘れ物でもしたかな?と思って話をしていたのですが、じつは用件はデートの誘い。ちょっといい男だったのでうれしい気もするけど、番号を教えてもいないのに、いきなり電話をかけてくるのはブキミ。私の連絡先をどうして知ってるの? と聞いたら、お店で記入したカルテを見たとか……。私の個人情報を勝手にのぞき見していいわけ?
- (22歳/のぞかれた女さん)
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- 行きつけの美容院の美容師から電話がかかってきた
- 美容院で、店のカルテに連絡先などを記入した
- 美容師は、カルテを見て連絡先を調べた
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名前や生年月日、性別、住所など、特定の個人を識別することができるデータを「個人情報」といいます。携帯電話番号は個人情報としては法定されていませんが、プライバシーに関する重要事項です。のぞかれた女さんも、記入したときにはあくまで、美容院がお客様資料として使うもの、と考えたはずです。
個人情報を扱う、店などの事業者は、その情報の使いみちをできる限り特定し、さらに、本人の了承を得ずにその使いみちの範囲を超えて個人情報を利用してはいけないことになっています(個人情報の保護に関する法律第15条、16条)。カルテには美容師にとって必要な情報も書かれているでしょうから、店の従業員である美容師がカルテを見ること自体に問題はありません。でも、カルテに書かれた電話番号をデートの誘いなど個人的な目的に使うのは、プライバシー侵害行為であって、明らかに不法行為となるでしょう(民法第709条)。
のぞかれた女さんは、不法行為に対する慰謝料を請求することができます(民法第710条)。請求できる相手は美容師と、個人情報の取り扱いに責任を持たなければならない事業者である美容院。個人情報をきちんと保管していないということで、美容院自体の不法行為責任も問題になるということです。また、店は自らの不法行為責任のほか、美容師が行った不法行為に対する使用者責任に基づいて慰謝料を支払う義務もあります。なお、店が使用者責任に基づいて、のぞかれた女さんに弁償した場合は、店はその慰謝料分を損害賠償の求償として美容師に請求することもできます。プライバシーを侵害した美容師としては、損害賠償義務を免れないということを意味します。
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- 裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。
イラスト/つぼいひろき