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お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!
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婚約中の彼と一緒に、占い師に運勢を見てもらいました。結果は最悪。彼はこの先、出世もしないし、私たちの結婚生活はきっと不幸に……。その場では笑って無視したのですが、それ以来、彼を見る目が変わってしまいました。私は結婚準備のためにすでに仕事を辞め、新居探しも始めていたのですが、結婚するのがイヤになってしまったんです。悩んだ末、彼に婚約解消を申し出ると、「占いなんかのせいで!」と激怒。私を結婚詐欺で訴えるとまで言いだしました。でも、不幸になるとわかっている結婚なんて、したい人がいるわけない! 婚約解消したくなるのも当然。私は悪くないですよね?
- (25歳/指輪返すわさん)
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- 婚約者と結婚する準備を進めていた
- 占いをしたら、結果がよくなかった
- 占いの結果が気になり、婚約解消を申し出た
- 彼が怒り、結婚詐欺で訴えると言いだした
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一生を共にするつもりの彼が、たいして出世もせず、家族を幸せにできないことがあらかじめわかってしまったとしたら……。たしかに、将来に不安感を抱きますので、気持ちが冷めてしまってもやむを得ません。でも問題なのは、指輪返すわさんの心変わりの原因が、占い師の言葉だということです。占いを信用するかどうかは個人の勝手。でも常識で考えた場合、占いとは「当たるかもしれないし、当たらないかもしれない」という程度のもの。言われたことをすべてうのみにしてしまうのは、いかがなものでしょう。
婚約とは、婚姻予約契約のことですから、契約を解除するためには、正当な理由、すなわち法律が認めた解除理由というものがないと破棄することはできないのです。正当な理由がないのに、破棄すれば、不当破棄として損害賠償の問題に発展します。
婚約を破棄するために必要な「正当な理由」とは、円満な結婚生活ができなくなるような事情があるどうかです。例えば、精神上や身体上の欠陥があって円満な結婚生活が送れない場合、婚約中に異性と付き合うなど不誠実な行為をしている場合、侮辱、または暴力行為をした場合等の事情などが挙げられます。相手が嫌いになった、相性が悪いと言われた、家柄が違い過ぎる、親が反対した、ほかの人と結婚することになったなどということでは正当な理由になりません。
占いによって「将来こうなるかも……」ということだけでは、客観性に乏しいと言わざるを得ませんので、法的に正当な理由に当たるとは言えません。指輪返すわさんが彼にしたことは不法行為(民法第709条)にあたり、彼から慰謝料(民法第710条)を請求されても文句は言えないでしょう。
ただし、「結婚詐欺だ!」という彼の言い分にもムリがあります。詐欺罪(刑法第246条)は、人をだまして財物(お金や品物など)を得たときに成立するものだからです。結婚準備のために退職しているなどの事実からすれば、指輪返すわさんに結婚の意思があったのは明らかです。結婚する意思がないのに、結婚をエサに彼から品物をだまし取ったなどという主張は認められないでしょう。
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- 裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。
イラスト/つぼいひろき