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お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!
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彼と初めての旅行に行きました。宿泊先は、老舗の和風旅館。なんとなく気分を出したくて、宿泊者カードに夫婦のフリをして二人の名前を記入したんです。そしたら、隣でそれを見ていた彼から「ちゃんと書かなきゃダメだよ!」と突っ込みが。ちょっとしたシャレなんだからいいじゃない……とそのまま出しちゃったんですが、彼ったら「法律的にも問題がある」とかなんとか、ずっとブツブツ言ってるんです。おかげでせっかくの旅行が台なし。宿泊者カードなんて形だけのものだし、何から何まで正直に書く必要なんてないと思うけど……。この程度のことが法律違反になるなんてこと、ないですよね?
- (22歳/ワケなし女さん)
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- 彼と夫婦のフリをして、宿泊者名簿に偽名を記入した
- 彼に「法律違反だ」と突っ込まれた
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宿泊者名簿に事実を書くのは、宿泊者の義務です。ホテルや旅館に宿泊すると、チェックインするときに必ず住所や氏名を書かされます。でも、宿泊者名簿などに記入する際、身分証明書の提示を求められるわけではないので、偽名やニセの住所を記入したとしても、その場でバレることはありません。
では、本人確認をするわけでもないのに、個人情報の記入を求められるのはなぜなのでしょう?
じつは、ホテルや旅館などの宿泊施設は、「宿泊者名簿を備えて宿泊者の氏名、住所、職業などを記載し、役所からの請求があったときはその名簿を提出しなければならない」と法律で定められています(旅館業法第6条1項)。また、宿泊者は、宿泊施設側から請求があった場合、氏名や住所、職業などを知らせなければならないことになっています(旅館業法第6条2項)。つまり、宿泊者名簿に偽名を記入することは、立派な旅館業法に違反する行為ですので、彼の指摘は大正解です。
宿泊者名簿に記入するのは面倒くさいし、書こうと思えばウソも書ける、というのは宿泊施設側にもわかっていること。それでもあえて記入を求める裏には、こんな理由があるのです。旅館業法には罰則規定もあり、名簿にウソの情報を記入したことが発覚した場合、29日以内の拘留または1000円以上1万円未満の科料(少額の罰金)を負わされる可能性があります(旅館業法第12条)。この法律を知っている人は多くないでしょうが、万が一、罪に問われた場合、「知らなかった」というのは理由になりません。法諺(ほうげん)(法のことわざ)にも「法の不知は許されない」との趣旨のものがあります。ワケなし女さんのイタズラ心もよくわかりますが、法律に詳しい彼にとっては「ちょっとしたシャレ」で片づけられることではなかったのでしょう。これからは気をつけましょう。
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- 裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。
イラスト/つぼいひろき