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お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!
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マンションの隣の部屋に住む女性は、玄関前の狭い通路に花の鉢をズラーッと並べています。歩きにくいけど、きれいだからいいかな?と思って、特に文句も言いませんでした。でもこの前、気をつけていたのに、買い物袋をひっかけて花の茎を1本折っちゃったんです。すぐに謝りにいったんですが、なんと隣の女、私が折ったのが高級な蘭だから、花の代金を払えって言ってきたんです。わざと折ったわけじゃないし、こっちは通路が歩きにくいのをずっとガマンしてきたのに……。
悪いのは私? 隣の女?
- (カニ歩きさん/22歳)
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- 隣の部屋に住む女性が、マンションの通路に花の鉢をたくさん並べている
- 花があるせいで通路が狭くなり、歩きにくかった
- 気をつけていたのに、荷物をひっかけて花を折ってしまった
- 折った花の代金を弁償してほしいと言われた
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折った花の代金を弁償する、といった損害賠償(民法第709条)をしなければならないのは、不法行為によって相手に損害を与えた場合です。不法行為とは、故意(わざと)または過失(うっかり)によって、他人の権利を侵すことをいいます。
カニ歩きさんが花を折ってしまったのは、買い物袋がひっかかったせい。「折ってやろう」と思ったわけではないので、明らかに故意ではありません。また、通るときに「気をつけていた」のですから、過失ともいえません。隣の部屋の女性は、多くの人が行き来する玄関前の通路にたくさんの花を並べていました。おまけに、その通路は狭く、花があることで歩きにくいと感じるほどなのですから、どんなに注意していても荷物などをひっかける可能性はなくせないように思えます。状況を考えると、花を折ってしまったことは不法行為にはあたらないでしょう。カニ歩きさんは、礼儀として相手にきちんと謝罪すれば十分。損害賠償までする必要はありません。
そもそも、マンションの通路や階段、ベランダなどは居住者の共用部分(建物の区分所有等に関する法律第4条)。個人が勝手に物を置いてはいけないのです。本来は使う権利のないスペースに個人的な物を置いていること、また、通路が狭くて花があると通りにくくなることなどを考えると、カニ歩きさんを責めるのはおかどちがいというもの。今回のトラブルは、隣に住む女性にすべての責任があると言わざるを得ません。
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- 裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。
イラスト/つぼいひろき