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お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!
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仕事中、同僚のA子と言い争いになり、エキサイトしたA子が、私の顔にコップの水をバシャ! 次の日、A子は、黙って洋服のクリーニング代を渡してきました。謝りもしないなんて許せないので、「アンタのしたこと、暴行罪じゃない!」と絡んでやりました。そしたらA子のヤツ、「殴ったわけじゃないんだから、警察呼んだって私は無罪。無罪なんだから、ほんとはクリーニング代だって払わなくていいのよ!」と逆ギレ。A子のしたことって、暴行じゃないの? それに、暴行罪で無罪になっちゃうと、クリーニング代も払わせることができないの?
- (ひややっ子さん/23歳)
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- A子に、コップの水をかけられた
- 翌日、A子からクリーニング代を渡された
- A子は、自分がしたことは暴行罪には当たらず、クリーニング代も、本来は払う必要がないものだと言っている
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「暴行」というと、「殴る蹴る」など相手に痛い思いをさせること、というイメージがあります。でも実は、「暴行」のバリエーションは実に豊富。法律では「人の身体に対する不法な攻撃方法のすべて」を暴行と見なします。そのため、実際に相手の身体に触れたり、相手に痛い思いをさせたりしなくても、暴行を加えたと見なされることもあるのです。これまでの裁判で実際に暴行罪とされたケースには、「髪を切る」「驚かせるために他人の数歩先に石を投げる」「犬をけしかける」「人のまわりで大きな音で鐘や太鼓を打ち鳴らす」といったものも。そしてA子さんがしたように「他人の顔に水をかける」ことも、暴行に当たります。
他人に暴行を加えると暴行罪(刑法第208条)に問われ、有罪になると2年以下の懲役、または30万円以下の罰金などが科せられます。さらに、暴行によって相手がけがをした場合は傷害罪(刑法第204条)となり、10年以下の懲役、または30万円以下の罰金などが科せられる可能性が。この場合のけがには、暴行によるものだけでなく、攻撃を避けようとした際のものも含まれます。
また、洋服のクリーニング代もきっちりもらう権利があります。ひややっ子さんの洋服に水をかけたことは明らかな不法行為(民法第709条)。不法行為は民法、暴行は刑法で裁かれることなので、クリーニング代の支払いと、暴行罪はまったく別の問題。仮に暴行の件で無罪になったとしても、クリーニング代まで支払わなくてよいことにはなりません。
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- 裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。
イラスト/つぼいひろき