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「東京に出てきてから会ったのは、SMの調教師の彼。50歳くらいかな。私やっぱりその世界好きなんですよ。で、たまたま夜遊びで知り合ったSMの女王様に誘われて『本格的な調教ってどんなのかな』って好奇心があったところだったからすぐ会いに行って。そしたらすぐされちゃった。隣で女王様はそれを見てて、『あ、またか』って顔してた。気に入ったらすぐやっちゃうってタイプの人だったみたいで。で。軽井沢に別荘があるからおいでって誘われて。着くなりすぐベッドにぎちぎちに縛られて。
彼はすごくタイプなんです。声が宇崎竜童に似てて。今もときどき会ってますよ。ほかにも女性はいると思うけど。まあ会っているときは二人きりだし楽しいからいいかって。 最初別荘で会った時はドキドキしましたね。それこそ部屋一面にSMの道具が並んでるんですよ。壁には十字架、ベッドには拘束具。壁と床一面にムチ、ローソク、浣腸器……。
私、最初の彼がSだったじゃないですか。でも縛りとかはなかったから、本格的にされたらどうなるんだろうっていう興味がすごくあったんです。で、機会があったら試したいっていう。彼はそういう意味では理想的な人で。初めて縛られて吊り上げられる、その行為が始まる瞬間までが一番盛り上がりました。どうなるのっていう不安と期待で。でも不思議と縛られ始めた瞬間気持ちは萎えた。不思議だけど。そこからは『よくやるなあ』って、醒めて上から見てるような自分がいて。それでも楽しいんですけどね。ひととおりは全部したんです。緊縛、吊り下げ、ムチ、スパンキング、ローソク、浣腸。体的には全部受入れOKで。彼上手だし感じる」 |
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──SM、好きなくせにそれに対してさえ醒めているあなたがいるんだね。
「本物の職業M女になろうとかは思わないんですね。そこまではのめりこんでないっていうか。ああ、ここまで見たから次は普通でいいなって気持ちも今はあります。好奇心が一番強かったんだって。
でもやっぱり今の彼といると楽しいんですよ。今までで一番の喜びをくれるのは確か。いつまでもつきあってしまうかもしれない。なんか、女って面倒ですよね。幸せなだけじゃ足りないの。でも愛されないのは嫌。欲張りなんですよ。いつもその両方の気持ちを行ったり来たりしている」
──それはあなたそのものっていう感じだよね。真面目に見えて大胆。すごく激しいくせに醒めていて。
「そうなんです。ドライなんですよ、私。すごい体験も混ざっているかもしれないけど、私にとってはすごいことでもなんでもなくて、ただの好奇心で。もっとドキドキできるかな、と思って誘いに乗るんだけど、し始めた途端に醒めちゃうことの繰り返しで。だからすごいことしてるなんて感覚、全然ないんですよね」
そう言うと彼女はあはは、と笑った。これから仕事はどんなことがしたい? と聞いたら、ウェディングドレスを手がけたいんだという。素敵だ。そして彼女はいつウェディングドレスを着るのだろう。どんな花嫁になるのだろう。ドレスはみな純白だけど、その中に隠された肉体は、それぞれに違う色の炎を隠している。
じゃあ、写真をお願いします。と言うと彼女は黒い服を脱いだ。その服の下には、赤のリボンでバイピンクされた、シースルーの紫のスリップ。それは彼女の白い肌にとても映えた。
彼女はだんだんに大胆になっていく。少女らしい顔にだんだん情欲の表情が宿っていく。普段は無彩色のくせに、脱ぐとカラフルな炎がともる。『魔性』という言葉が似合う女の子に、私は今夜出会った。 |
■さかもと未明プロフィール
OLから漫画家に転身。愛と性を生涯のテーマに、コミックのみならず、ルポ、エッセイ、小説と活動の場を広げる。現在、『SPA!』(扶桑社)、『ViVi』(小学館)、日刊スポーツ新聞などで連載を持つかたわら、TVにも出演。多忙な日々を送っている。 |
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