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最初は行きつけのディスコの黒服ですね。仲良くなって。彼女はいるけど風俗嬢で。最近上手くいかない、なんて話聞いて『あ、やれる』と思って。彼とは2年くらいつきあいました。初めて『イク』感じを教えてくれたのも彼。つきあい始めてから、それこそ毎日のようにして。彼とし始めて50回目くらいかな。『あ、これがイクって感じかな』って。
彼がいてくれれば、ディスコで遅くまでいてもボディーガード代わりになってくれるので、安心して遊べましたね。でも、たまに気が向くと浮気。ブラザーとか、友達に自慢できそうな相手。この頃だいぶ遊びましたよ。でも心は満たされないなって感じで。結局大学生のおぼっちゃんぽい子と真面目につきあうようになって、同棲を始めました。
そしたら水商売が急に嫌になって、化粧品の販売の仕事に変えた。もう男遊びも十分して『よし、スッキリ!』って感じだったし、実はセックスそんなに好きじゃないんですよ。男がしたがるから『まあやらしてやっか』ってそんな感じ。そうすると優しくしてもらえるでしょ? それでいっか、って。
あのね。実は私には15歳のときからずっと純愛を捧げている人がいるんですよ。歌手なの。有名な人。もちろん会ったこともないし、つきあうなんてとてもって相手なんだけど、本当に好きなの。一生純愛を捧げるつもり。彼に比べたら、現実の男はまあ、間に合わせみたいなとこがある。もちろん好きなんだけど、彼がいないと死ぬとか、そんなこと思ったことは一度もない。
セックスはせいぜい1日1回、30~40分ですね。若い頃は1日2回なんてのもあったけど。それが月に2回もあれば十分。今はもっと少ないですよ。年2回とか(笑)。でも本当にそれで十分。『ちょっと足りない』、『少し物欲しそう』くらいが綺麗のコツと思います。やりすぎも、やってなくてガツガツしてるのもよくない。今日はやってもいいよ。そのくらいの余裕が大切」 |
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「で、その後、ちょっとした転機が来るんですよ。親が連絡してきて、父親の会社がつぶれて、父は倒れて、借金が1500万だって。なんつーか私、姉御肌だから、なんとかしてやんなきゃって。ヘルスに勤めて、それ返してあげたの。でもね、なかなか思うとおりにいかないですよ。月40万の返済ですよ。最初は利子をさらに消費者金融で借金して返すみたいな生活で。結局3000万は払ったんでしょうね。でも完済しました。で、ちょうどその頃父が70歳過ぎて医療費かからなくなったんで、一気に楽に。でも、ヘルスはそんなに辛くもなかった。私メチャメチャやる気ない風俗嬢で。シャワーは10分くらいかけて丁寧に洗ってあげるんだけど、生フェラもマッサージもなし。私がマグロで横になって『好きにしていいよ』みたいな(笑)。
でも不思議とお客さんがついて。クビにならなかった。そういう風俗嬢が珍しかったのかもしれないですね。お客さんには恵まれましたよ。そう、私いい出会いにいっぱい救われてるの。それはこれから話します。
父はね、その後病院から出てきて、別の事業を計画して、まただまされて。その時は200万の借金でしたけど、それも返してあげたんです。父は死にそうだったときに一度だけ『すまなかった』って言ってましたね。でもなんか、うちの家族って薄いの。普通そこでわんわん泣くじゃないですか。でも私も『フーン』て感じだし、向こうも本当に最後に一言しれっと言っただけで死んじゃって。本当にすまなかったと思ってんのかって感じ。
母もね、その後病気になって。ICUに入ったとき、週に48万とかの請求が来て。そんなの払えないですよね。その頃は銀座のクラブに移ってたんで、お金もそんなにないわけだし。でも困ったなー、って思ってたら、お客さんのお金持ちの人が『一緒に暮らそう』って。フーンと思って家に行ったら、一人暮らしなのに、10LDKとかなの、都内で。家賃払えないから、しばらく居候して助けてもらったんですよね。それで母はなんとか面倒みてやれた。でも、本当にお金はすってんてんになったんで、その彼に言ったんです。『私、あんたに何かあったら路頭に迷うから、保険金の受取人になりたい』って。そしたら『籍でも入れるか』って。そして結婚。それでみんななんとかなっちゃったの。母親も死ぬまで面倒みてあげられたし。私、いつも人に恵まれるんですよ。だからどんな時もいつも幸せ。
人生っていい時も悪い時もあるじゃないですか。それは当たり前なんで。昼と夜みたいなもんなんですよ。調子の悪いときは『今は夜、今は雨。でもいつか晴れる』って思えば、なんのことはないんですわ」
なんという素晴らしい人生哲学! 私は凄く感動した。でも彼女の人生これで終わらない。
「じゃ、今はその人とお幸せに?」そう聞く私に彼女は答えた。
「それがね。彼とは結局5年一緒にいたんですけど、2年目くらいからお互い飽きてきちゃって。私はその間に向こうのお父さんの介護とかしてあげられたんで、思い残すこともないんですけど、まあいずれ別れようねって。でも私、今行くとこないから、次の男ができるまで養ってって話してたんですよ。そしたら、製薬会社に勤める4つ年下のサラリーマンと出会ったんで、一緒に暮らすことにして、離婚して今は彼と暮らしています」
なんとも見事な女の転身である。苦労を苦労と思わないで人のために献身できる、彼女の人徳というほかないだろう。
「子供はね。私たくさん病気してるんで、無理だと思ってます。でも、それでいいって言われて。また結婚するかな。今度何年もつかわかりませんけど、私嘘がつけない人だから。飽きたらまた同じこと繰り返すでしょうね。でもいつもなんとかなったから、これからもそうなると思ってます」
最後に彼女は夢を語ってくれた。
「いつか本が書きたいの。自分の人生で考えたこと、本にして残せたらと思ってる」
応援してるよ! 私は本当にすっきりとした気持ちで、彼女と別れた。 |
(文中はすべて仮名です)
2003.12.19up |
■さかもと未明プロフィール
OLから漫画家に転身。愛と性を生涯のテーマに、コミックのみならず、ルポ、エッセイ、小説と活動の場を広げる。現在、『SPA!』(扶桑社)、『ViVi』(小学館)、日刊スポーツ新聞などで連載を持つかたわら、TVにも出演。多忙な日々を送っている。 |
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