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第17回 対人恐怖症
自己主張の苦手な、日本人に多いといわれる「対人恐怖症」。
人からよく思われたいという気持ちは、誰しも持っているものですが、 それが病気の引き金になることも……。
あなたは今、人間関係で悩んでいませんか?
監修/榎本稔(榎本クリニック)
人に対して不安になる
対人恐怖症
その名の通り、他人と接する場面において過剰なほどの不安や緊張感を覚え、身体的にさまざまな異変が表れる神経症の一種。初対面や大勢の人の前に出たときに、人見知りをしたり、あがるのは当たり前のことですが、対人恐怖症はこれが過度になった状態です。
他人をもっとも意識するようになる、思春期に多く見られる病気で、自分は他人からどう思われているのだろう、もしかしたら嫌われているかもしれないという不安、思うように、うまく周囲と付き合えないという焦り。このような人間関係の葛藤が、身体的トラブルとして表れてしまうのです。
過去に人前で起こした失敗や嫌な経験がきっかけになることが多く、再びそのような事態になるのを恐れるあまり、他人との接触を避けるようになります。
症状はおもに6種類
思い悩んで悪化する場合も
強い精神的ストレスにより、人と接したときに、下記のような症状が表れる対人恐怖症。誰に対しても症状が表れるわけではなく、家族やごく親しい人など、心を許せる人の前では平気な場合がほとんどです。このような症状を思い悩んだり、恥ずかしく思うことからさらに症状が悪化し、日常生活を送るのが困難になるケースもあります。
●自己臭恐怖
自分の身体のにおいが気になり、まわりに迷惑をかけていると感じる
●視線恐怖
他人の視線が怖い。相手の目を見ることや、自分の目を見られることを避ける
●醜形恐怖
自分の姿が醜いと思いこみ、そのため相手に不快な思いをさせていると感じる
●赤面恐怖
人と対話するときや、緊張する場面で顔が真っ赤になる
●振戦恐怖
「振戦」とは「震え」の医学用語。人前で緊張すると、声や手が震える
●場面恐怖
人前で発言したり、気軽に会話をすることができなくなる
あなたも対人恐怖症にかかりやすいタイプかも
早速チェック
対人恐怖症は、心に悩みを抱えやすい人に多く見られます。こんなタイプの人は、対人恐怖症にかかりやすい可能性が……。あなたは大丈夫?
まわりを気にし過ぎる
●自意識過剰タイプ
人から自分がどう見られているか常に気になって仕方ない。いつも気を張っているため、一人になると、どっと疲れてしまう。
さみしがり屋で内気な
●孤独タイプ
ちょっとしたことで傷つきやすい。人とコミュニケーションを取るのが苦手で、心から信頼を置ける人がいない。
自分の気持ちを押さえ込む
●よい子タイプ
誰に対しても人当たりがいい。まわりに嫌われたくないため、思っていることを口に出せず、つい相手に同調してしまう。
曲がったことが大嫌い
●まじめタイプ
自分のミスや相手の気になる面が許せない完璧主義者。何か起こると自分を責めてしまうため、ストレスがたまりやすい。
思い悩むのは禁物
適切な処置をうけて
さまざまな経験を積み、年齢を重ねることで他人との付き合い方を学ぶことも多いため、症状が軽い場合は自然と治まることもあるようです。しかし、一人で悩むのは禁物。病院で適切な処置を受けましょう。病院ではカウンセリングや抗うつ剤の服用など、症状に合った治療をゆっくりと進めていきます。精神科だからと構えず気軽に相談に訪れましょう。
人間関係の悩みは、どんな場面でも生じるもの。うまく対処できる人ばかりではありません。不器用な自分を責めるのではなく、ありのままを受け入れること。「人は人、自分は自分」という気持ちが大切です。キーワードは「どうにかなるさ!」。
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心療内科医
榎本 稔 - 1月11日生まれ。東京医科歯科大学医学部卒、医学博士。日本外来精神医療学会理事長。成増厚生病院副院長、東京工業大学保健管理センター教授を経て、榎本クリニックを開業。 榎本クリニック/電話 03(3982)5321
- 人付き合いが苦手で、人間関係がうまくいかないために転職を繰り返しています。これは対人恐怖症なのでしょうか……。
- 人見知りをしたり、苦手な人がいるのは誰にでもある当たり前のことです。人とうまく接することができないからといって、必ずしも病気であるとは限りません。そんな自分の性格を気に病んで、心を閉ざしてしまうことが病気の始まりにつながってしまいます。無理をせず、つらいと感じたら精神科を訪れてみてください。
イラスト/トシダナルホ