10代後半～20代女性に多い
「過喚気症候群」

　突然、呼吸がハアハアと浅く速くなる過呼吸状態に陥り、息苦しさやめまい、手足のしびれなどの身体的症状が起こる「過換気症候群」。
　発作自体は30～60分ほどで治まり、命に関わることはありません。しかし、正常な呼吸が困難になることから「このまま死んでしまうのではないか……」という不安にさいなまされて、さらに症状が悪化し、息苦しさが数時間続くケースも。
　この病気の原因は、ストレス。不安や緊張、欲求不満といった、心に抱え込んだストレスが引き金となり、過呼吸発作を引き起こします。そのため、大切な場面に直面したときや、緊張や不安が高まったときに症状が起こりやすくなります。特に10代後半～20代の女性に多く見られる病気です。

注意!!　過換気症候群になりやすいタイプは?

下記の設問に4つ以上当てはまる人は、過換気症候群にかかりやすい傾向に。あなたは大丈夫?

□仕事や人間関係など悩みがある
□感情をコントロールすることができないときがある
□神経質で常にイライラしがち
□あがり性で人前に出るのが苦手
□ちょっとしたことですぐ不安になる
□ときどき胸が苦しくなったりため息をつくクセがある
□不規則な生活が続いている
□毎日仕事先と家の往復で変化に乏しい

ココロの病気が身体的症状までも招く原因とは?

　過呼吸発作により、さまざまな身体異常を引き起こす要因は、体内の酸素と二酸化炭素の濃度が変化するため。浅く速い呼吸を繰り返すと、血液中の酸素量が増加し、二酸化炭素の量が減少します。その結果、血液がアルカリ性に傾き、めまい、動悸、手足のしびれ、失神といった症状を招いてしまうのです。
　過呼吸を静める方法は、ゆっくりとした呼吸を心掛けること。息を吸ったらいったん止めて、深く大きく吐き出すことを繰り返します。しかし発作が起きるとパニック状態になってしまうため、とっさにそのような対処を行えないことも。このような場合は、紙袋を用いる「ペーパーバック呼吸法」が効果的です。ストレスを溜め込まないよう下記の方法を試して、普段から心がけましょう。

■体調管理
寝不足、過労、風邪をひいたときなど体調が不安定なときは発症しやすい。体調管理に注意
■呼吸法
発作を避けるためにも、日頃から、大きくゆっくりと呼吸することを心掛けること
■不安は禁物
発作が起こりそうになったら焦らずに「すぐに治まる」という楽な気持ちで呼吸を整える

●身体や心が疲れていると感じたら、こんな訓練法を試してみては?
1.ゆったりとしたイスに腰かけたりベッドにあお向けに寝て目をつぶり、身体の力を抜く
2.深呼吸し「身体中がゆったりと落ち着いていて、気持ちがいい」というイメージを浮かべる
3.気持ちが落ち着いたら、徐々に身体に力を入れ、ゆっくりと起き上がる

●ペーパーバック呼吸法●
　紙袋で鼻と口を覆い、その中で呼吸をする方法。自分で吐いた息を吸い込むことで血液中の二酸化炭素濃度が正常に戻る。ビニール袋は気密性が高いため、そのまま使用するのは×。少しすき間をつくるか、小さい穴を開けること。発作が不安な人は、常に紙袋やビニール袋を携帯して。

ストレスを取り除くことが治療への近道

　過換気症候群は、心の状態により大きく左右される病気。一度発作を起こした経験を持つ人は「また同じように苦しい思いをしたらどうしよう……」という不安感から、発作を誘発してしまうこともあります。
　この病気の一番の治療法は、ストレスを取り除くこと。趣味や、自分が楽しいと思えることを見つけて、リラックスできる時間を持つように心掛けましょう。
とはいえ、ストレス要因を解消することはなかなか難しいはず。何が心の負担になっているのかわからない人も多いでしょう。発作が頻繁に起こったり、自分で対処することが難しいようなら、一度精神科や診療内科を訪れて。医師に相談するだけでも気持ちがずいぶん楽になり、病気が快方に向かうことも。抗不安剤などを使用した、薬物治療を行う場合もあります。

●発作を起こした人がいたら……●
突然、過換気症候群を患っている人が発作を起こしたら、ペーパーバック法で冷静に対処を。まわりの人がパニックになってしまうと、本人は余計に不安になり、症状が悪化しかねないため注意。

イラスト／トシダナルホ