カシコイおもてなし
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言葉のいらないコミュニケーション(2/2)

相手のリズムを読んで自分が合わせる

これはインターネット的とも言えて、一人一人が個々のパーツとなって、全体として成果を得る。
個人の力はたいしたことがなくても、パズルが急スピードで完成していきます。
「集合知」とも呼ばれるものです(拙著『クズが世界を豊かにする』参照)。

 個々人を見ると、たいしたことはないのに、女のコの写真がいっぱい出ている風俗店のサイトは魅力的に見え、
対して平均的クォリティがいかに高くても、女のコの数が少ない店は貧相に見えるようなものかな。
ちょっと違うか。

このドラムサークルというのは音楽の原初的な形とも言えて、それを今の時代にアレンジし直したものが世界中で行われており、
小田氏がやっているのは「アナーキー・ドラムサークル」と呼ばれ、すべて即興の場当たり的な組み合わせやノリで進行していくものです。
当然面白くならないこともあるわけですが、デモの熱狂の中では、最低限の合意やノリの統一がなされやすいようにも思えます。

リズムは共振する。
共振した人と人は言葉を介在させない意思疎通が可能。

はい、これはセックスですね。
ちょっと前に書いたように、人は固有のリズムというものをもっていて、それがうまくシンクロした時に至福の時を得られます。
「セックスのリズムはゆったりがいい」なんて、それが唯一の真理であるかのように、したり顔で言う人がいますが、
こういう人はその奥にある真理に気づいていません。
真理は人によって違う。
組み合わせによって違うのです。
まさに、デモでのドラムがそうです。

すぐれたプレイヤーは、相手のリズムを読んで自分がそれに合わせることで、さまざまなタイプに至福の時をもたらす。
これが風俗嬢の秘技です。
ドラムサークルが成立するのも、他者の音を体感して、それを今度は自分がアウトプットするからです。

そういえばセックスには原則として指揮者がいません。
乱交を除けば「私」と「あなた」しかいない。
打ち合わせをすることも稀。
決まったルールもあんまりない。
まさにドラムサークルであり、気心が知れた人とするのも楽しいけれど、偶然の喜びもあって、いろんな人とするのが楽しい。

そこでワケのわからない店長が指揮者になろうとすると調和が乱れます。
実際、プレイヤーの能力が低いため、指導者が適切なコメントをした方がいい場合もあるんですけど。
デモにだって発見はあるものです。

プロフィール
文 = まつざわくれいち/1958年生まれ。『エロスの原風景』(ポット出版)、『風俗お作法』(小社)など著書多数。 イラスト = 友沢ミミヨ

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