この連載は今年いっぱいで終わりです。
長年書いてきたことを簡単にまとめると「人はそれぞれ」ってことだったりします。
だからこそ、面白いし、だからこそ難しい。
これは風俗に限らず、人間関係のすべてに言えることです。
半世紀生きてきた私だって、なお人をどうコントロールしたらいいのかなんてことはわからないです。
人によって違うのですから。
それでも、多数の人に通じる普遍性の高いワザというものがありますし、客を分類して、それぞれのグループに通用するワザというものもあって、そういうものを本連載では書いてきたつもりです。
そういうワザは、実のところ、この何百年もそうは変わっていないものです。
表層はどんどん変わっていっても、人間の本質、男と女の本質はそう大きくは変わらない。
今と変わらないインドの遊女の教え
ほとんど誰も覚えていないでしょうが、ずいぶん前に、江戸時代の娼婦の教えを紹介したことがあります。
江戸時代の教えも今に通じるものがあるって話。
その時に、インドにも同様のものがあって、それをいずれ紹介すると言ったままになっていたので、今回はそれを取り上げて、約束を果たしておこうと思います。
インドに古い娼婦の教科書があります。
四半世紀前に、『遊女の手引き』というタイトルで平河出版社邦訳も出ていたことがありますので、古本屋で探してみるとよろしい。
この本は元娼婦の遣手婆が現役の娼婦に心得を伝授する内容なのですが、今とホントに変わらないのです。
まずは「客を選べ」。
将来につながる相手を選ぶことが不可欠ってことです。
結婚したり、愛人になったりすることは今の時代だってないわけではないですが、そうじゃなくても長くつながる客を確保することが大事です。
そうすれば、店が客を呼べなくても、客を確保することができますし、困った時には客が助けてくれます。
その客をその気にさせるには言葉のテクが必須で、「名女優のセリフと仕草が必要であり、馬鹿には務まらない」とあります。
この連載で繰り返して来たように、昔から娼婦の仕事は言葉のやりとりに重きがあるのです。
馬鹿のフリをすることはあっても、本当の馬鹿では人を操れません。