松沢呉一の店外講習
風俗取材に携わって10余年。ひたすら「エロ街道」を歩き続ける著者が、お店スタッフや女の子との交流を重ねて得た、風俗業に関するさまざまな知見をここに開陳。連載第3回目は、算数の時間!? リピート率を使って、指名数や売り上げをシミュレーションします。

バックナンバー

 実際にはこれほどきれいに計算が成立することはなく、見た目がものすごくマズいのに9割の客を1ヶ月で戻すのは日本全国1人もいないに違いない。5割だって十分すごい数字ですからね。

 また、指名が増えれば増えるほど、客がつかずにいる時間が減るのだから、フリー客を平等につけることはできず、どうしたってフリーの客は暇をしている女のコにつけることになる。かといって、すでに書いたように、あまりに客の戻りが悪いコには安心して新規の客をつけることができないため、いくらルックスがよくても、Aちゃんのようなコには新規の客はつけにくいのだから、この計算通りにフリーをつける店はほとんどない。

 それでも傾向としてはこのような結果となり、初動は圧倒的に見た目が影響する。まして雑誌に出ているコはそうだ。しかし、ルックスが抜群によくても、1 割しか客を戻せないのでは、客が全然蓄積されない。実際に1割も戻せないフードルだってたくさんいて、その僅かな客にしても、サービスが悪いのでは、三度四度は来ず、常に新規の客を開拓していかないと本数を維持できない。顔フェチとて、何度も見てれば飽きるってもんで、顔主体の客は長持ちしないのだ。

 それと同時に、実力を発揮するには時間がかかるってことでもあって、入店2ヶ月目でナンバーワンになるような天才肌のコは別にして、指名本数や売り上げという点で、数字が表れるには少なくとも半年くらいはかかる。なのに、いったん蓄積した指名客を捨てて他店に移ってゼロからやり始めるのはもったいない。指名客のいないコは身軽でいいですけどね。また、指名客がすぐにつくコは3日で客が戻ってきたりもして、どこに行ってもすぐに元通りってことでもありますけどね。

 このことをわかっていないから、「私はこの店には向いてない」なんて早とちりして、次々と店を移ることにもなる。ホントにダメなコは辞めたっていいんだが、リピート率がいいのに早とちりしない方がよく、店も細かなデータを出しておいて、彼女を安心させた方がいいのだ。

 かといってルックスのいいコがダメなはずもなくて、1割しか戻せないAちゃんでも、雑誌指名と写真指名とを常に新規で稼げるため、Cちゃんよりもチャンスは多い。仮にAちゃんとCちゃんのリピート率が同じだったら、圧倒的にAちゃんが有利なのである。

 なのにルックスのいいコが案外伸びないのは、ルックスに依存してしまって、磨きをかけない傾向があるためだ。もちろん、もっと問題なのは、ルックスがよくなく、自分の人気がないことをそのせいにして終わってしまっているコだけどな。
区切り

 さて、私には、いつか誰かに指摘されるのではないかと怯えながら、まだ誰も指摘してこない秘密がある。

 これだけ風俗嬢の魅力はルックスではないと強調しながら、私が遊んでいるコたちは、ほとんど全員と言っていいくらい見た目がいい。好き嫌いがあろうから、誰もがもれなく納得するわけではないでしょうけど。

 どうしてこうなるかというと、私は馴染みになるコを選ぶチャンスが多いのである。取材とかプライベートとか合わせると、少なくとも週に2人は新規で風俗嬢に出会える。年に100人以上の中から、自分の好みを探せるわけだ。さらに、情報もたくさん入ってくる。写真もいっぱい見られるし。

「ルックスはいいが、サービスのダメなコ」よりも、「ルックスは悪いが、サービスのいいコ」を私は選ぶが、それよりさらに「ルックスがよくて、サービスもいいコ」を選ぶ。そうできる環境にあるってことであり、事実、私が遊んでいるコらは、ルックスがよくて人気もあるコたちだ。必ずしもナンバーワンになるタイプのコを好きにはなるわけではないんだが、指名本数、リピート率のどれをとっても上位に属しているコばかり。

「おい、松沢、話が違うじゃないか」と誰かに突っ込まれるだろうとずっと思っていたんだが、自分で告白して楽になってみた。算数の時間と思わせて、本当は懺悔の時間なのでした。
区切り

前のページへ

プロフィールへ