風俗取材に携わって10余年。ひたすら「エロ街道」を歩き続ける著者が、お店スタッフや女の子との交流を重ねて得た、風俗業に関するさまざまな知見をここに開陳。「メールの極意」第2弾である今回は、営業メールが苦手なヘルス嬢・さくらちゃんとの問答を中心にお届けします。
「それで、店に出かけていくんだ」
「そそくさとね。すげえ忙しくて、遊んでいる暇がない時は行きようがないけど、たまたま渋谷にいて、次の打ち合わせまで2時間くらい時間が空いて、どうしようかなって思っている時に“元気ですか。たまには遊びに来てください”ってメールが渋谷のコから来たら遊びに行くよね。池袋でも2時間あれば十分だから、池袋まで足を伸ばすこともある。予約が入っていてすぐには入れないために、次の打ち合わせの方を遅らせたりして。メールをした直後に遊びに行くと相手も喜んでくれるしさ」
「それは嬉しいかも」
「あとはね、“明日暇ができたから、どっかに遊びに行こうかな”って思っているとするじゃないか。何人か候補がいて、そのうちの一人からメールが届いたら、間違いなくこのコのところに遊びに行く。メールがなかったら、他のコのところに行っていたかもしれないけど、同じくらいに魅力的なコだったら、メールをくれたコを優先。順位をつけるとしたら、三番目のコだったとしても、メールを優先かな。メールを10本送ったら、10本指名が増えるというほどの効果はないけど、1本2本は増える程度にはメールの効果があると思うよ」
「その程度でも、毎日メールをしてれば、バカにならないね」
「だよね。即効性はなくとも、メールのやりとりを続けていれば、そのうち来てくれることもあるよ」
聞くところによると、キャバ嬢の中には1日200本のメールを出しているのがいるそうだ。一人一人に全部違う文章を送っていたら24時間でも送りきれないから、同じ文面で送っているのだろう。
私もキャバ嬢とメールのやりとりをやっていたことがあるが、「今日は雨降り。冷え込みそうだから、風邪ひかないように気をつけてね。私はこれから出かけまーす」なんて、明らかに複数の客に送っていることがわかるメールがあるかと思えば、時々こちらの名前がちゃんと入っている文面が送られてきたり、内容も私一人に送っていることがわかるものが送られてきたりして、省力化を図りつつも、「あなただけよ」と思わせるものを入れ込んでいる。
複数の相手に送っているものは、奥さんや彼女に見られてもいいように、露骨にキャバクラ嬢からだとわかる文章は避けて、天気のことや社会一般の話題について触れ、個人に送るものでは、相手を見つつ、「お仕事が一段落したら、また顔を見せにいらしてね(はぁと)」なんて書く。
また、人によっては、こういう営業っぽいフレーズは一切使わない。紋切り型のフレーズは避け、ひたすら友達モードのメールばかりを送り、「これからお店なの」とか「今仕事を終わったところ。今日はすごい忙しかったよ」といったようなフレーズで、店のことを匂わせる程度だ。営業であるが故に営業臭さを徹底的に排除しているのだろう。
こういった配慮をするだけでも大変な作業ではあるが、メールで指名本数が確実に増える時代には、このくらいはやらざるを得ず、これをやっているうちにメール・テクが身につくってものだ。
「そういうメールって、“遊びに来て”とかって、露骨に書かない方がいいんだ」とさくらちゃん。
「これは女のコのキャラ次第だし、客のタイプ次第だけど、毎度そういう内容ばっかりだとイヤになるし、一発目から営業臭いと敬遠されるだろうね。逆に“マ ×コなめにきて”って書いた方がかわいらしくてイヤミがないかもね。日常的に仲良しメールをしている相手だったら、今日は暇だからどうしても呼びたいという時には“今日、お店がすごく暇だから来て”って露骨なことを書いてもいいんじゃないかな。ダチの頼みってカンジがして、かえって親近感があるかも」
前に大阪のナンバーワンのコに会った時、彼女はこんなことを言っていた。
「だいたい予約で埋まりますよ」
「すごいね、今時、1日出勤してゼロのコだっているのに」
「そんなの、信じられないですよ。そんなんだったら、自分で客を呼びます」
関西のコたちの方が営業メールを熱心にやっている印象があるが、たしかに1日一人も客がつかないのは、本人の責任と言えなくはない。
このコがいざとなれば客を呼べるのも、普段から、「元気ですか」なんてメールを送り続けているからだろう。
私はこのコの話を紹介しつつ、さくらちゃんにこう言った。
「その辺のバランスは相手を見つつだろうし、フォローの仕方だよ。“お願いだから、今日来て”と言われて出かけて行って、“こんなこと、松沢さんにしか頼めないから”とか言われたら、イヤな気はしないだろ。それどころかかえって効果倍増かも」(続く)
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