松沢呉一の店外講習
風俗取材に携わって10余年。ひたすら「エロ街道」を歩き続ける著者が、お店スタッフや女の子との交流を重ねて得た、風俗業に関するさまざまな知見をここに開陳。長らく続いた「メールの極意」も、残すところあと2回。今回と次回は、メールをする際の注意事項についてお送りします。

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区切り

  以前、営業電話について、「店とは違う電話の態度で興ざめすることがある」という話を書いたことがある。普段はテンションを上げているから、甲高い声をしているのに、いざ電話をすると、低いダルい声で出てきて、電話しなければよかったと思うって話だ。

メールの場合は「かったるいな」と思っても、文章ではそんなことを匂わさずに、「メールをくれて嬉しいです。また会いたいですね」なんて書けるから、電話ほどはそういうギャップを感じないで済むものだが、それでもなお素っ気ない返事しか寄越さないのがいる。

彼氏と一緒に住んでいて、彼氏も仕事のことを知っているため、客にメールをすることまではいいのだが、メールを時々チェックしていて、あまりに客と仲がよさそうなことを書くと、いい顔をしないと言うのがいた。

私には彼氏がいることを言っていたからここまで説明できるわけだが、そうじゃない客には説明しようがなく、だったら客とはメールなんてしない方がいいんじゃなかろうか。

メールで営業するんであれば、返事をマメに書くことは必須だ。会いたくなって、「今週出勤してる?」とメールを送っても、返事がないと、「出勤してないんだな」と思って、店に行かないことがある。もう1回メールしても返事がなければ、「嫌われたんだろうな」と判断して、それっきりになる。

特に「時間ができたから遊びに行こう」と思って、「今日出勤している?」とメールを出して返事がないと、「出勤していても、客がついていて忙しいんだろうな。今度にしよう」と思って、改めて店に確認しない。

悪気があるのではなく、店に電波が入らなくて、出勤している時はメールを見られず、送れないケースもあって、こういうことはしっかり客に説明しておいた方がいい。それをやらないと、客を逃す。


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  メールというツールが登場しなければ、店に出勤を確認して遊びに行って、今も関係が続いていたかもしれないのに、メールのために、客を逃しているケースは案外多いのではなかろうか。

私自身、好きなコからのメールであれば、どんなに忙しい時でも、必ず返事を出す。その日に出さなくても、翌日か、その翌日には出す。稀には返事を出すタイミングを逸することがあるが、二度続けて同じ相手に返事を出さないのは「もうメールしてくれなくてもいいよ」ということだ。

自分がそうだから、相手もそうだろうと判断してしまうのだが、必ずしもそうではない。

まずは客に問題のあるケース。たとえば初めて会ったコにアドレスを教えてもらって、店を出た直後に「今日はありがとう。また来るね」とメールを送る。直後のことだから、「オレだとわかるだろう」と思って、いちいち説明を入れないが、あっちにとっては今日接客した客だけで何人もいて、アドレスを教えた客もまた複数いたりして、どの客かわからないのである。

「どの人?」などと返事をくれればいいのだが、こういう聞き方をするのは失礼かと思って、そのままにしてしまい、こっちも「返事なしかよ」と思ってそのままになる。

これは女のコも同じで、客はそうそうアドレスを教えてないだろうと思いこむのか、「この間はありがとうございました。楽しかったです」なんてメールが来たが、こっちはアドレスを聞いてなかったコだったため、どの「この間」だったっけと迷い、結局失礼かもしれないと思いつつ、「どなたでしたっけ?」とメールを送り、やっと判明したことがある。(続く)
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