お金のトラブル相談室-第1回-
彼にお金を貸したけど行方不明に。
お金を取り戻す裁判の手続きの仕方と時効について教えて下さい。
昨年までつき合っていた彼に貸したままの30万円のお金を「返してほしい」と言ってたんですが、突然職場を辞め、住んでいたアパートからも引っ越して連絡が取れなくなりました。彼の両親や友人に聞いても、「どこに行ったのかわからない」と言われました。理由を話して「居場所がわかったら教えてほしい」とお願いしたのですけど、半年以上たった今も何の連絡もありません。どうしたらいいのでしょうか。裁判ができるのなら、手続きの仕方とか教えてください。それと、このような場合、時効とかあるんでしょうか?
居場所がわかったら「小額訴訟制度」を利用できる
もし、彼の住居所がわかるようになれば、次の手続きを取るのがよいでしょう。
30万円以下の金額の支払いを請求する際は少額訴訟制度を利用することができます。少額訴訟とは、一般の民事訴訟の手続きとは異なっており、原則として1回の期日で審理が終了し、その日のうちに裁判所が判決を言い渡すというものです。
裁判を進める手続きも簡易なため、弁護士に委任することなく、自分で裁判をすることができます。審理も一日で終了するため、利用者にとっては非常に負担も軽く、利用しやすい手続きとなっています。
居場所が不明のままなら通常の裁判に
彼の住居所がわからないままでも、裁判を起こすことが可能です。この場合、金銭の支払いを請求する額が30万円であっても、通常の裁判の手続きを取らなければなりません。少額訴訟に比べると手続きが少し複雑になります。
まず、裁判所に「公示送達」によって訴状を送達してほしいむねを申し立てることが必要です。公示送達とは、訴えを起こしたい相手方の住居所が不明である際に、裁判を起こすための手続きです。難しいと思われるかもしれませんが、本などを参考にしながら自分でもできます。
また、彼の住居所が不明であるという証明が不可欠です。具体的には、あなたが、彼の両親や友人に直接聞いても住居所がわからなかったということを裁判所に対する報告書として作成したものや、彼が以前住んでいたアパートに手紙を出してみて、転居先不明という郵便局のスタンプが押されて戻ってきたものなどです。そのほかに、彼が住んでいたアパートの部屋の表札が他人の名前に変わっていたり、部屋が空室になっていれば、その写真を撮ってください。これらも住居所が不明であるという証明になります。
これらの証拠を提出するとともに公示送達の申し立てをすれば、相手が行方不明であっても裁判を提起することができ、相手の知らない間であっても判決が下ります。
返済日の翌日から10年経過すると借金は時効に
しかし、判決が下りても彼の行方がわからないままであれば、お金を受け取ることができないので、訴えることに意味がないと思えるかもしれません。ここで借金の時効の問題が出てきます。
個人間の借金の債務の時効は、弁済期の翌日から(弁済期の定めがない時は、貸した日から。ただし初日不算入です)10年と法律で定められています。あなたが公示送達を申し立てて訴訟を提起しますと、いったん進行した消滅時効は中断し、その訴訟で勝訴することで、借金の消滅時効はさらに10年間延びることになります。ですから、その間に彼が資産を取得したり会社に勤務していることがわかれば、判決に基づく強制執行をして30万円を返してもらうこともできることになります。
住居所不明の証拠を用意し、公示送達の申し立てをします。
勝訴すればさらに時効はのびます。