第1回 『順子』の巻
今月はレディースコミックから少し離れて、「漫画サンデー」っていう老舗劇画誌 連載中の漫画を紹介するね! っていうのはこの漫画、ウォーターフロントで働く女の子たちに、是非読んでほしいからなんだ。 「田村順子」って名前を聞いたことあるかな? 昭和の銀座のママの代名詞みたいだった人の名前なんだよ。この『順子』って漫画はその人の半生(つまり実話!)を漫画にしたものでね、!倉科遼氏の原作を、勘崎順次氏が劇画化してるんだけど、これが絵はスバラシーし、人物描写は見事だし、でハマってしまうんですね~。
父親なしに自分たちを育ててくれた母親の苦労を見た順子が、「銀座のママになりたい!」 と、一念発起。さまざまな人に会いながらサクセスしていくその半生を追って物語は進行する。最初の大きな出会いは森崎さんという社長との出会い。彼によって順子は銀座の一流店「后」を紹介され、そのママについていくと決める。様々ないじめやトラブルに遭いながらも、成長していく順子。その合間合間に、優しく厳しい先輩やママによっていろんなことを教えられていくの。どんな風に接客すべきなのか。どんなお洒落が男を捕らえるのか。ネオン街で生きていくための「掟」にはどんなものがあるのか。それを守らないと、どんなことになっていくのか………。話そのものは、まるでおとぎ話のようなサクセスストーリーなんだけど、その経緯がしっかり描かれているから、納得できるし、うすっぺらくないんだよねー。
ああ、人生ってこういうところで差がつくんだ。仕事って単にお金を稼ぐためだけのものじゃない。人間性がいつも試されていくんだって考えさせられてね。ホント、てぃんくる読者のみんなには絶対読んでほしい漫画なんだよ!!野心ってものはみんな持っているんだけど、それにつぶされていく人と、それで伸びていく人はどう違うのか。同じ仕事をしていても、幸せをつかむ人と、消費されてしまう人はどこが違うのか。この『順子』ってバイブルを読んで仕事をすると、きっと人生開けるんだと思うのよね~。
順子が成功していくのって、ハッキリいって美人なせいと、運の良さが半分だと思うんだ。でも残りの半分は順子のたゆみない努力なんだよね。あ、ここまでなら男の力でいけるって部分があるじゃない? 順子が凄いのは、そうやって造ってもらった土台に自分の努力を積み上げて、本当の大きな城を築いていくことなんだね。で、もともとそういうのがあるからこそ、男の人が助けてくれるっていうか。
この森崎さんっていう、最初に順子を見つけて磨いてくれる男の人がまた秀逸でね。いい男なんよ~。男って愛した女にはこうしてくれる。そしてそれを裏切らないために、順子が何を守っていくのか。やがて順子は彼から借りたお金を返して独り立ちし、恋愛も清算していくんだけど、それがもめないのは、順子が筋を通しているからなんだよね。男の人も、凄い美学をもって女を愛そうとしている、それがなんか感動でね。こういう男についていかなくちゃいけないな、と痛感。お互いが伸びていける恋愛ってどういうもんなのかを、この漫画は教えてくれますぜ。
もうひとついうなら、昭和っていうまだ貧しさがの残っていた時代の日本がどんな感じだったのか。みんな、何を大切に生きてきたのか。そういうところが勉強できて面白いよ! ただねー。いま現実にそんなことがおこるかっていったら、せちがらい世の中になっちゃってるからさ。君たちはもうすこし、賢くしたたかにやるしかないと思うんだけど。男の人って、いつの時代も女の子に「夢」を求める生き物だと思うんだ。そのへんを是非わかって、心ある接客のできる女の子になってほしいな★ そういう心をもって生きていると、きっと仕事で教えられるものってあると思うんだよね。仕事はお金だけじゃないよ。おんなの「生きざま」みたいのを見せる場が仕事なんだよ。そして今年も、君たちの生きざまでネオン街が輝くように、是非頑張ってくれーーーっっ!!
■さかもと未明
OLから漫画家へ。レディースコミック、エッセイ等各誌で連載を持ち、最近「文學界」で小説デビューも果たす。著作は「ゆるゆる」(マガジンハウス刊)「だって幸せになりたいんだもん」(朝日ソノラマ刊)等多数ありのスーパーお姐さん。