第4回 『解決はしません』の巻
さて、そうはいっても都会で暮らしていくことは大変。楽しいことばかりじゃありません。ううん、むしろつらくて孤独に感じることが多いかも。私もたまーに、『世の中でたったひとり』な気分になってしまって落ち込みます。男とは上手くいかないし、友達には連絡とれないし、仕事も上手くいかないし……ってときがあるよね。あれ? この前まであたし絶好調だったはずなのにってさ。
実際都会で暮らしていると、普通に結婚することさえ大変。そんな御大層なことは望んでいないはずなのに、普通に好きになったひとと一緒に暮らしたいだけなのに。今時ってセックスは簡単だけど、その先となると、大変なんだよね。男たちは「なんでわざわざ結婚すんの?」なんて言うしさ。そんな時女の子は死にたくなっちゃう。いくら自立したところで愛が手に入らないと、女は幸せになれないよね。
そんな不安定な都会の恋愛で、「パニック障害」になってしまった女の子の漫画を、いま内田春菊先生が、『別冊ヤングユー』(好評連載中)で書いてくれてます。「もしかしてあたしも……」なんて悩む女の子は必見! まずは自分と主人公を重ね併せて慰められると思うし、その次はもしかして自分を少し距離をおいて見られるようになるかもしれない。自分の苦しみの中に埋没すると出口なしに思えちゃうけど、他人のこととしてみると、「こうしたらいいのに!」って思える可能性って高いから。
内田春菊先生の漫画があたしはすごく好きなんだけど、なんていうのかな『ああ、そうだよね。そうだよね』っていう、女の子がセックスや仕事に向き合うときの戸惑いが実に等身大に描かれていて感情移入できるんだ。「私と同じ!!」と思ったことあるひと多いんじゃないかな。私なんかも実は、大学卒業して就職してすぐノイローゼになっちゃってさ。すごく苦しんだんだけど、『解決はしません』はその時の不安感そのままが描かれていて、なんか、読まずにいられません。 主人公は男に助けてほしくて、救いを求めるほどに冷たくされていく。男に頼るのをやめないと、男は手に入らないんだけど、わかってても頼って煙たがられるのが、女なんだよね~。私もよくこれと同じことやって嫌がられるのよ(笑)。いつまでも成長しないです、私も。
この主人公、繭子みたいにしてちゃ上手くいかないのは解ってるんだけど、あんまりあっさり付き合ってもつまらんしね。そのへんの距離感がつかめるようになると、上手くいくのかもしれないけど、まあ人生試行錯誤ですよ。都会生活も大変で、パニック障害なんかにならなくて済めばそれはそれでいいんだけどさ、それに近いギリギリの所でまずは生きて、だんだん強くなっていくしかないんだと思うのね。だからもし君が孤独にさいなまれていたら、まずはこの作品を読んでみてほしい。自分だけじゃないってきっと思うよ。あたしもそうだった。今急に解決することなんてきっとない。どんななぐさめも、病気は甘えだなんていう叱咤激励も、そんなの解決にはなんない。だってつらいんだもん。前向きになれっていわれてなれるならとっくにしてる。
だけどさ、死ぬのだけはやめようよ。明日まで生きたら、いいことがあるかもしれない。こんな自分だって、何時か誰かの役にたてるかもしれない。パニック障害になっちゃうくらいの子って、愛情が深くて、優しい人だと思うんだ。悪いことだけじゃない、そんなあなたのいい部分をいつ活かせる時がくるからさ。あたしは元気のないときはね、ダイエットなんて忘れてたくさん食べるんだ!カツ丼とかって、落ちこんでいるときはいいよ。そして「風と共に去りぬ」を見るのさ!なにがあっても何度でも立ち上がるスカーレットの姿は、いつも私を力づけてくれるんだあたしもいつかあんな漫画書きたいね。君たちも「いつか~したい」って夢だけは捨てないでくれ! つらいときはたくさん食べて良く寝れば、きっと元気になるからさ~!
■さかもと未明
OLから漫画家へ。レディースコミック、エッセイ等各誌で連載を持ち、最近「文學界」で小説デビューも果たす。著作は「ゆるゆる」(マガジンハウス刊)「だって幸せになりたいんだもん」(朝日ソノラマ刊)等多数ありのスーパーお姐さん。