第8回 「軍鶏―シャモ―」の巻
久しぶりみんな! 元気だった? マンガに人生を見るこのコーナー。今後益々充実のラインナップでバージョンアップを計ってゆくつもりなので楽しみにしててくれ! さて、今一番みんなに紹介したいマンガが、週刊アクション連載中の「軍鶏」(橋本以蔵+たなか亜希夫・双葉社)これがもー、たまんなく面白い! ま、いってみれば平成版「あしたのジョー」で、少年院帰りが格闘技に目覚め、様々な強敵と闘いつつ成長していくっていう大枠は一緒なんだけどさ。読み進めるうちに、もしかして主人公の「成嶋リョウ」は「矢吹ジョー」を超えるかも! すでにパクリマンガから充分に脱皮して「ジョー」に双肩する存在感を作っている、と感心させられてしまうのよ。
成嶋リョウがジョー以上に私達の心を捉える可能性があるのは、そのキャラクターがすごく現代的なせい。ジョーは貧しい家庭出身ゆえの不良だったけど、成嶋リョウは何不自由ない家庭に生まれ、東大にいけそうな秀才であったにも関わらず、その「何不自由ない家庭」に、説明のつかない憎悪を抱いて、何と両親を惨殺してしまう。ここから成嶋リョウのキャラクターはスタートしてて、そのへんがいかにも現代的だよね。
ジョーはあくまで貧しさや社会といった他者と闘い続けたけど、リョウの場合は相手をいくら倒しても、自分という魔が増複されて再び自分の前に立ちはだかる。本当はジョーの問題も同じなんだけど、この軍鶏のほうがよりディープに内面の魔に切りこんでいるところがある。そのへんの心理ドラマをどう切りさばいていくかが、この物語が「あしたのジョー」を超えられるかどうかの分かれ道になるんだろうね。でも、もしかして本当にリョウはすごいとこにいっちゃうかもしれない。すごい楽しみだ! で、さらに女の子が読んでて楽しいのはさ、このマンガには次から次へとやたらセクシーで、女流には絶対描けないワイルドさをもった男達が続々登場するってコト!
最初のほうは完全に男の世界で女のコには入りにくいんだけど、ハマるとその男臭さがたまらんし、最近の連載で登場した、東馬っていうダンサーのキャラがたまんないの!和製ニジンスキーか、ジョルジュ・ドンかっていう美しい男が何故かリョウと闘うために格闘技の世界に入ってくるの。その肉体の美しさ、タマんないよ!
で、女には体験できない、ギリギリの土俵でせめぎ合う男達の世界。是非体験してちょ!後悔はさせません。
■さかもと未明
OLから漫画家へ。レディースコミック、エッセイ等各誌で連載を持ち、最近「文學界」で小説デビューも果たす。著作は「ゆるゆる」(マガジンハウス刊)「だって幸せになりたいんだもん」(朝日ソノラマ刊)等多数ありのスーパーお姐さん。