第1回『おんな乱舞』の巻
Tinkle読者のみんな、はじめまして!あたちは「さかもと未明」、漫画家。
女の子のための愛と性をテーマにした漫画やエッセイを書いて暮らしています。いわゆる「レディコミ作家」ってやつですね。今月から愛するレディコミの世界を紹介させていただくべく、このページを担当させていただきます、是非みんな読んでね!
で、まずいの一番に紹介したいのが渡辺やよい先生。あたちの一番尊敬する先生であります。どこがすごいって、まずはセリフ回しですよね。「アムール」7月号掲載「おんな乱舞」からの抜粋をさせていただきますとー。
「両手をついて、尻をだして手をつくんだ」「あ…あ…。いやァ、恥ずかしい…」「あれからずっと濡らしていたんだろう」「ああください、これ下さい」「ネチョ、クプ、んぐっ。あふう!、くふん、うぐん!はふう、んくうっ、おおんぐっっ! いっちゃうう、あふううあんっっ!あなた! いやらしい私をゆるしてええ~~~~~~~っ!」
てなカンジ。最後の波線が泣かせます。これは夫を失った悲しみに暮れる未亡人が、墓場で会った、妻を亡くしたばかりの男と情交するお話。未亡人はやがてその息子とさえ交わるのだけど、そんな彼女を知りつつ受け入れる男が実はガンだと知るわけです。それまではただ男の玩具となって、やられるだけだった彼女なんだけど、それを知った途端、男を「やる」側に回るのね。夫と息子を同時に誘って、三人でやるのがクライマックス。するといままで優位に立っていたかに見えた男が、実は死への恐怖を紛らわすためにセックスしてただけだとバレるの。反対に、おんなは男の死を前にして生気を取り戻すの。女の性は死をのみこんで生を生み出すと理解したかのようにーーー。
渡辺やよいの漫画のどこがすごいって、いつも最後にそういった女の情念とセックスの「その先」を見せてくれることなのよ。ヒロインたちはいつも果 てしなく陵辱されているのに、果てしなくたくましく、神聖なの。あたちはやよい作品って、純文学だと思ってるのね。死の向こうの生、陵辱されることの勝利、汚されることの神聖さが作品の中にいつも輝いているの。とにかく女たちが中途半端でなくていいのよ!
Tinkle読者みたいに「俗」の中に身を投じるみんなには是非読んで欲しい漫画!世の中に消費された気がして疲れたとき。男に負けてしまいそうに思えるとき。女がどんな風に美しく逞しく振る舞えばいいのか、きっと教えてくれると思うんだ。是非みんな読んでみて。そしてお仕事頑張ろうね!未明も頑張ってまーす。
■さかもと未明
OLから漫画家へ。レディースコミック、エッセイ等各誌で連載を持ち、最近「文學界」で小説デビューも果たす。著作は「ゆるゆる」(マガジンハウス刊)「だって幸せになりたいんだもん」(朝日ソノラマ刊)等多数ありのスーパーお姐さん。