第12回『ラブ・イノセント』の巻
レディコミ界もここんとこ、「スター的」作家が少なかった感があるんだけど、これからのスターの一人に絶対入るよな、と思うのがこの綾野ゆういさん。ひところの渡辺やよいを彷彿とさせるリアルかか書き込みの多いねっとりとした画面で、すんごくハードなカラミを見せてくれるのよねえん。
彼女の作品ではほとんどが3P4Pじゃないかってくらい、複数人数でのカラミが多いのだけど、それをこなせるのも、この画力あってのこと! それが、これでもかってばかりに繰り返されるからすごいよ。もう全部のページの半分はカラミ、それもマックスにハードなのばっかって感じで。さすが先生、読者が何を望んでいるかよくごぞんじ!でも、絵がリアルで情感タップリなのと、登場人物の精神世界や表情の描写 が卓抜しているせいで、単に興奮して終わるポルノでは決してないんだよね~。 日本の古い伝統や暗い欲望にあえいでセックスするひとたちを書かせたら、いまこのことの右に出るひとはいないとおもう。
こんかいのラブイノセントは、綾野先生には珍しく日本家屋が出てこない現代もの。すごくお金持ちの家の不良のぼっちゃんに犯される家庭教師の女が、愛なんてこれっぽっちもない坊やとセックスに、ある「イノセンス」を感じてはまっていく話なの。主人公の家庭教師の「先生」は、なんの苦労もなく育ったお嬢さんのせいか、母親に虐待された過去をもつ椋の非行をほうっておけない。量 を構い、けむらがられ、「愛なんて信じない」 といわれるほどにハマッて、結局はいつも椋とその仲間たちに輪姦されまくるんだけど、女として正直彼女の気持ち、分かるんだよね。
ただ満たされているだけでは駄目で、どこかでひどい目に会いたい、大切にされるよりも酷い目に会うことの中に「聖」なるものを感じる気持ちって女の中にあるじゃない? それだけじゃなくてさ、やっぱし女の中には『ほんとう気持ち良いのならば、いろんな男にやられたい、えんとひどく、失神するくらいにいじくられて見たい」って願望は絶対あると思うんだよね。そのへんをこの作品は旨く見せてくれるっていうか……。「やめて~」なんて被害者の立場で、こんな風にいろんな男になぶりまくられたら、正直楽しそうだなー………てかんじなんだよね。
もちろんほんとうに犯されたらたまんない。痛いし殺されるかもしれないし、病気や妊娠の恐れだってある。こんな状況漫画だから快楽があるように見せられるんで、現実にそんなことがあったら、どんな女だってきづづくよ。でもさ、イマジネーションの世界においては、女ってこんなふうに扱われたいんだよねー。
とくにフェミニズムが蔓延してしまった現代だからこそねこういう漫画は女の生き抜きになること太鼓判! たまにはこんな世界に心およがしてみてもいいと思いますよ。とくに綾野作品は手の節や、指が食い込んでひしゃげる肉のすべてを執念のように描写 しています。これが本当にやらしいから、抜けること必至! です。
■さかもと未明
OLから漫画家へ。レディースコミック、エッセイ等各誌で連載を持ち、最近「文學界」で小説デビューも果たす。著作は「ゆるゆる」(マガジンハウス刊)「だって幸せになりたいんだもん」(朝日ソノラマ刊)等多数ありのスーパーお姐さん。