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法的トラブル相談室-第9回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
体重5kgのはずが10kgに育った愛犬。
ペットショップの責任は?
イラスト

10ヵ月前、ペットショップで「豆柴」という犬を買いました。その犬種を選んだのは「おとなになっても体重は5kgぐらい」と言われたから。 マンションに「小型犬のみOK」というルールがあるので、大きくなる犬ではダメだったんです。でもこの犬、どんどん育って今では10kg超。個体差がある、って言っても、2倍はありえない!
マンションの管理組合には事情を説明してあるけど、中にはイヤミを言う人もいて、私も愛犬も肩身が狭い……。いいかげんなペットショップめ、責任とれ!

(28歳・柴犬の友さん)

・マンションに「小型犬のみOK」の規定がある
・おとなになっても体重は5kgぐらい、と言われて買った犬が、購入後10ヵ月で10kg になってしまった
質問
例外的に大きくなることもある、と説明しなかった店の責任は重い!

ペット選びには住環境など、いろいろな条件がからんできます。ペットに関する規定のあるマンションに住む柴犬の友さんにとって、その犬がどのぐらいの大きさになるのか?は重要なポイント。今ほど大きくなることを知っていれば、豆柴はあきらめて別の犬種を選んだはずです。
犬を買う、という行為は、法律的には「店と買い手の間に犬についての売買契約が成立する」ということ。店側には、「豆柴」と表示している以上、商品である犬について正しく説明する義務があります。たしかに生き物には個体差があり、多少は大きい犬もいるでしょう。でも体重が予想の2倍となると、「太りぎみ」とか「ちょっと大柄」という限度を超えています。ここまで育つ可能性があるのなら、売る際に「例外的に普通の柴犬並みに大きくなることがある」と、説明しなければいけません。
店側がダマした場合は詐欺として売買契約を取り消すことができます。ダマす行為がなかった場合は、詐欺には当たりませんが、豆柴は大きくならないという重要な点について勘違いがあったときは錯誤で契約は無効と主張できますし、この点について十分な説明をしなかったことは隠れた瑕疵(かし/※欠点・欠陥のこと)とされます。柴犬の友さんは、この瑕疵を理由に売買契約を解除し、損害賠償を請求することができます(民法第570条、566条)。
また重要な点について十分な説明をしなかったことは債務不履行とみなされ、柴犬の友さんは、債務不履行を理由に売買契約を解除し、損害賠償を請求することができます(民法第415条、543条)。
契約解除をすれば支払った代金が戻ってきますが、引き換えに商品を返さなければなりません。でも、柴犬の友さんの場合、かわいいペットを今さら返すわけにはいきませんよね? ですから契約解除はあきらめて、損害賠償を請求するのが現実的。損害賠償には、犬が予想外に大きくなったために必要となった費用(えさ代など)のほか、精神的苦痛に対する慰謝料も含めることができます。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。