戻る

法的トラブル相談室-第11回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

バックナンバー

質問
バイト先の社長が夜逃げ!?
保証人」が給料を払ってくれるよね。
イラスト

バイト先の社長が、夜逃げしました。給料はもちろん未払いのまま。社長にはどうしても連絡がつかず、居場所もわかりません。従業員以外の会社関係の人で連絡先がわかるのは、会社の保証人になっているAさんだけ。
今さら社長が戻ってくるとも思えないので、せめて未払い分の給料だけでも清算してもらいたいのですが、Aさんに請求すれば支払ってもらうことはできますか?

(22歳・社長出てこいさん)

・給料未払いのまま社長が夜逃げした
・社長とは連絡がとれない
・保証人に未払い分の給料を請求したい
質問
保証人が、何に対して保証契約を結んでいるのか?がポイント

Aさんは「会社の保証人」とありますが、いったい会社の「何に関する保証人」なのでしょう? 保証人とは、貸主との間に「借主が借金の返済などができない場合、私が代わって支払います」という「保証契約」を結んだ人のこと。会社の設立そのものに保証人が必要なわけではありませんから、今回のケースでも、おそらくAさんは会社が銀行に資金を借りたり、事務所の賃借契約をしたりした際の保証人なのではないでしょうか? そうだとすると、お気の毒ですが、Aさんには従業員への給料の支払い義務はありません。Aさんに保証人としての責任があるのは、銀行に対する借金の返済や、事務所の家主に対する家賃の支払いなど、保証契約を結んだ点に限られているからです。 たとえば、Aさんに給料の支払い義務が生じる可能性として考えられるのは、Aさんが「仕事や給料のことは、ワシが保証するから」のような形で、社長出てこいさんに仕事を紹介したような場合。いわゆる「保証人」とはイメージが違うかもしれませんが、入社する際にこうした約束があったのなら、Aさんは社長出てこいさんとの間に保証契約を結んだとみることができ、会社が賃金を支払えなくなった際、それをカバーする立場にあると考えられるでしょう。 ただし、Aさんが賃金の支払いとは関係ないとしても、未払い分の給料を取り返す手段はあります。会社に財産がある場合、それを処分して出た利益は、まず先に従業員の未払い賃金にあてる(民法第306条)、という賃金の先取特権があるからです。先取特権があるからといって会社の財産を勝手に売り飛ばしてはダメ。まず地方裁判所に差押えの申立てを行い、決定を得たうえで換価し、配当を受けるのが正解です。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。