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法的トラブル相談室-第15回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
同僚は遅刻・欠勤が多いのに、
なぜか時給アップ。不公平じゃない?
イラスト

バイト先の同僚のS子は、遅刻・欠勤の常習者です。彼女のせいで、一緒に働く私たちは仕事が増えて大変。でも、なぜかS子は、いつも売り上げナンバーワンで店長のお気に入りです。私は、売り上げはそこそこだけど、遅刻・欠勤はゼロ。自分の仕事はマジメにやってるし、S子みたいにほかのスタッフに迷惑をかけたこともありません。 それなのに、この前、S子だけが時給アップ!本人もいい気になりまくってて、見てるだけで頭にくる! 遅刻や欠勤をしないことって、最低限のルールのはず。それも守れないヤツがいい思いするなんて……。会社のこんなやり方、おかしくない?

(21歳・マジメで損したさん)

・S子は遅刻・欠勤が多くスタッフが迷惑している
・S子は売り上げナンバーワン
・S子だけ時給が上がった
質問
従業員の賃金を決める際、何を重視するかは会社の自由

「不公平だ!」と思うかもしれませんが、従業員の賃金は、経営者の判断で自由に決めることができます。査定のポイントも、何を重視するかも、法律でしばられることはありません。遅刻や欠勤が多いのは、たしかに社会人としてマイナスです。でも、そういった点を査定に反映させるかどうかは、会社の方針次第なのです。
働いた時間の分だけ賃金が支払われる時給制の場合、「1時間の遅刻」は、「1時間分の給料が支払われない」という問題にすぎません。マジメで損したさんの会社は、従業員の賃金を決める際、おそらく「売り上げ」を最重要視しているのでしょう。S子さんだけ働いていない分の時給までもらっている、というなら公平性に欠けるといえますが、S子さんが売り上げナンバーワンであることは事実。まわりのスタッフが不愉快に思う気持ちはわかりますが、会社を納得させる実績を上げている以上、彼女の賃金が上がることは不当ではありません。つまり、マジメで損したさんの会社は、社会人としての常識を身につけたコツコツ型の社員より、少しばかり素行に問題があっても売り上げを上げて会社に利益をもたらす社員を求めている、ということ。世間って、なかなか厳しいですね。
ただし、S子さんの遅刻・欠勤がまわりに迷惑をかけ、職場全体の仕事の能率を下げていることも事実。こうした勤務態度が今後も改まらない場合、会社から懲戒処分としての戒告や減給などの処分を受ける可能性もあります。おごれるものは久しからず。マジメな従業員をさしおいてS子さんだけがいい思いをしていられるのも、今だけかもしれませんよ。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。