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法的トラブル相談室-第15回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
別の店で買った食器を、デパートの
店員さんが紙袋へ。でも袋が破けて……。
イラスト

雑貨屋さんで食器を買ったあと、洋服を買いにデパートへ。会計のとき、私の荷物に気づいた店員さんが「お荷物を一つにまとめましょうか?」と声をかけてくれました。せっかくなので、食器の包みを洋服と一緒に大きな紙袋に入れてもらい、買い物を続けました。
そして数時間後、歩いているときに、いきなり紙袋がビリッ。地面に落ちた衝撃で、食器にヒビが入ってしまいました。
店員さんにすすめられなければ、食器をこんな紙袋なんかに入れなかったのに! デパートに文句を言えば、食器を弁償してもらえる?

(25歳/高かったのにさん)

・店員が別の店で買った食器を紙袋に入れた
・紙袋を数時間持ち歩いた
・袋が破け、中の食器が落ちて割れた
質問
袋が破けるのに気づかなかった本人の責任も重大です

「持ちにくいだろうから」と、ほかの店で買った商品まで入る大きな袋を用意してくれる……。さすがデパート、かゆいところに手が届く、うれしいサービスですね。デパート側にしてみれば、お客が支払う料金に含まれているのは、自分の店で買った商品を包装するところまでのはず。ですから、「ほかの店で買った荷物まで、持ちやすいようにまとめる」というサービスは、デパートが当然するべき業務というより、その店員さんの好意によって行われたものと考えられます。 では、好意でしたことだったら、そのあとの結果に責任がないのか?といえば、そんなことはありません。袋に入れるために荷物を受けとった際、店員さんにはその重さがわかったはずです。重いものであれば、強度のある袋を選ぶ、袋を二重にする、などの工夫をするべき。お客の持ち物を、荷物の重さに耐えられないような袋に入れたことは、店員さんの注意義務違反と言えるでしょう。
でも、高かったのにさんの不注意さもかなりのもの。いい大人なのですから、自分の持ち物には自分で責任を持つのが基本です。袋に入れた瞬間ビリッ!ときたならともかく、何時間か持ち歩いたということ。重い荷物を薄い紙袋に入れて長時間持ち運べば、袋が破ける危険性は高まって当然。それに、普通なら、紙袋が破ける前兆にも気づくことができたはずです。
店員さんの注意義務違反が証明できれば、不法行為として損害賠償(民法第710条)を請求することができますが、このケースでは、高かったのにさんの責任も重大。店員さんの法的責任を問うのは難しいでしょう。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。