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法的トラブル相談室-第17回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
前の住人あてのダイレクトメール、
ジャマだからって捨てちゃダメ?
イラスト

半年ほど前、今のマンションに引っ越してきました。1~2ヵ月に1回ぐらいなのですが、前の住人あてのダイレクトメールや会報誌のようなものが郵便受けに入っていることがあります。特に大切そうなものではないのでそのまま捨てていたんだけど、よく考えると他人あての郵便物を勝手に捨ててはいけないような気も……。
正直に白状すると、1通だけ開封したこともあります。だって、近所にオープンした居酒屋のチラシが入ったダイレクトメールで、表に「オープン記念メニュー&料金表」って書いてあったから、つい……。私がしたのって、いけないこと?

(23歳/ポイ捨て女さん)

・前の住人あてに郵便物が届く
・届くのはダイレクトメール類
質問
他人あてのものを勝手に処分してはダメ

誤配された郵便物を受け取った人は、その郵便物に誤配であることを表示してポストに入れるか、または最寄りの郵便局に届けなければなりません(郵便法第55条)。基本的に他人あての郵便物は自分のものではありませんから、勝手に捨てたり開けたりしてはダメです。大切なものかそうでないかは、本人でなければ判断できないのですから、「たいしたものじゃなさそうだから捨てちゃえ」なんてことをするのは間違いです。
正当な理由なしに、封をしてある他人あての信書を開封すると信書開封罪(刑法第133条)で1年以下の懲役または20万円以下の罰金に、他人あての信書を隠すと信書隠匿(いんとく)罪(刑法第263条)で6ヵ月以下の懲役もしくは禁錮(きんこ)または10万円以下の罰金に問われます。ハガキなど封をしていないものには信書開封罪は適用されませんが、みだりに内容を読むことはプライバシー権の侵害(憲法第13条)に当たります。
ちなみに「信書」とは「特定の受取人に対して差出人の意思を示したり事実を通知したりする文書」のこと。具体的には手紙や請求書、招待状、証明書などがこれに当たります。信書でないものとしては、新聞、雑誌、カタログ、乗車券や各種カード、ダイレクトメールなどが挙げられます。ただし、ダイレクトメールであっても、文書に受取人の名前が書かれていたり、商品の購入や契約に関わることが明らかであったりするものは信書とみなされるので注意が必要です。ポイ捨て女さんの場合、開封したのは居酒屋さんのチラシの入ったものなので、おそらく信書には当たりませんが、やはり他人あてのものを開封するのは感心できない行為。これからは面倒がらずに、メモをつけてポストに戻すか、郵便局へ届けましょう。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。