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法的トラブル相談室-第46回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
自転車をぶつけただけで
「ひき逃げ」って、どういうこと?
イラスト

  通勤途中で、女性に自転車を軽くぶつけてしまいました。「すみません!」と謝って通り過ぎたのですが、翌日、同じ場所で腕に包帯を巻いた女性に声をかけられました。彼女は近所に住む主婦で、昨日、私の自転車にぶつかって腕に軽いけがをしたと言うんです。びっくりして謝り、治療費の負担を申し出たのですが、相手の要求は、なんと治療費プラス慰謝料として50万円! それがイヤなら「ひき逃げ」で警察に訴えるって……。自転車のひき逃げなんてアリ? 犯罪者になりたくないなら、お金を払うしかないの?

(23歳/暴走娘さん)

・自転車で女性に接触したが、軽く謝っただけですませた
・相手の女性は軽いけがをしていた
・治療費+慰謝料として50万円を請求された
・慰謝料を払わなければ、ひき逃げで警察に訴えると言われた
質問
人にけがをさせて逃げた場合、自転車でもひき逃げしたことに

  交通事故を起こしたとき、車両を運転している人や同乗者は、すぐに停車してけが人を助け、警察に事故を届け出なければなりません(道路交通法第72条1項)。これに違反すると、いわゆる「ひき逃げ」や「当て逃げ」をしたとみなされます。ここで知っておきたいのは、道路交通法上の「車両」とは、自動車だけを指すものではないということ。自動車や原付さらに自転車、荷車、馬車や犬ぞり(軽車両といわれるものです)。などのほか、トロリーバスなどの乗り物も「車両」に含まれるのです(道路交通法第2条)。
つまり自転車で交通事故を起こした場合も、けが人を救護したり警察に報告したりする義務があるということ。これに違反すると、自転車の場合は、1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます(道路交通法第117条の5第1号)。ただし、現実には、自転車で接触した程度の事故で警察を呼ぶことは少ないはず。加害者がきちんと謝罪をすれば、話し合いで解決できるのではないでしょうか。
また、相手に何らかの被害を与えた場合、損害賠償(民法第709条、第710条)を請求されることもあります。損害賠償は、民事上の被害の救済方法であり、国家として法秩序を守るために科される刑罰や罰金とはまったく別のもの。請求額は被害者が自由に決めることができますが、事故によって受けた損害と認めるのが相当であると考えられるもので、一般には、治療費や慰謝料ということになります。被害者が腕に軽いけがをしただけということであれば、被害者が主婦であるということを踏まえると、治療費と慰謝料を合わせて50万円は高過ぎます。この主婦に特別な事情があって、腕にけがをしたことによって特別な損害が発生したとは考えられないからです。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。