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法的トラブル相談室-第54回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
私のことを恋人だと思い込んでいた常連。
彼氏がいることがバレた途端、逆ギレ!
イラスト

  Aさんは、お店でいつも気前よくお金を使ってくれる常連さん。私に特別な好意を持っているのはわかっていたけど、こっちは仕事。彼氏がいるなんて、聞かれても言わないし、リップサービスのつもりで「Aさん大好き~」なんてセリフも、よく言っていました。
でも、この前、彼氏とデートしているときに、Aさんにバッタリ。にっこり挨拶したら、どうやら、私もAさんに恋愛感情を持っていると思い込んでいたらしく、「だまされた」とか「俺のことを好きって言ったくせに!」といきなりAさんがキレたんです。その場は振り切って逃げたけど、その日の夜、店に来て、「これまでに使ったお金を返せ」って言い始め……。
Aさんは私がだましてお金を使わせた、って言い張るけど、接客業の女のコは、みんな同じようなことを言うはず。だましたことになんて、ならないですよね?

(22歳/二枚舌さん)

・常連のAさんが、自分に特別な感情を持っているのはわかっていた
・セールストークとして、「Aさん大好き」などと言い、彼がいることも隠していた
・偶然、彼の存在がバレてしまった
・「だまされてお店で使ったお金を返せ」と言われた
質問
接客業の人であれば許容範囲のリップサービスです

  他人からお金(または価値のあるもの)をだまし取ると、詐欺罪(刑法第246条)に問われます。例えば、「家族が病気で治療費が必要」などと同情を引くようなウソをついて返すつもりのないお金を借りたり、結婚の約束を餌にお金を貢がせたり……。自分が直接利益を得るほか、今回のように勤務先のお店などでお金を使わせるケースも考えられます。だましてお金を払わせた場合、だました人が直接お金をもらわなくても、詐欺罪は成立します。
では、二枚舌さんの場合はどうでしょう? Aさんに好意を持っているかのような言動があったとしても、「Aさん大好き」程度ならセールストークの範囲内。大人なら、真に受ける人は少ないはずです。また、彼がいることを黙っていたことも、問題はありません。聞かれても答える義務はなく、「彼はいない」とウソをついたとしても、常識的に考えて許容範囲内です。Aさんが「二枚舌さんも自分に好意を持っている」と思ったのは勝手な思い込みであり、だまされたとは言えません。さらに、Aさんは使ったお金の賠償を求めているようですが、飲食店でお金を使うのは、本人の楽しみのため。「だまされてお金を使った」という理屈は通用しないでしょう。二枚舌さんは、詐欺罪で逮捕されることもなければ、Aさんに使わせたお金を返す必要もありませんが、このようなトラブルは法律だけで完全に解決できるものではないはず。
これからはお客さんのタイプをしっかり見極め、セールストークは慎重に!

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。