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法的トラブル相談室-第57回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
彼に別れ話をしたらこれまでの家賃など半額を請求された!
食費は全額、私が払ってたんですけど!?
イラスト

  一緒に住んでいたA男と別れることになりました。同居していた2年間、二人の間の約束で、家賃と光熱費は彼、食費はすべて私が出していました。でも私が出ていくことになったら急に、A男がこれまでの領収書を全部持ってきて「半額払え」と言いだしたんです。私が食費を払っていたことを言うと、そんな証拠はない、って……。確かに家計簿もつけてないし、領収書やレシートも保存していないから私が食費を払っていた証拠はないけど、A男だって納得してお金の分担をしたのに……。A男が言うとおりに、家賃や光熱費、半額払わなければダメ?

(25歳/給食係さん)

・同居している彼と、生活費を分担する約束をしていた
・家賃・光熱費は彼、食費は自分が支払っていた
・別れることになったら、家賃と光熱費の半額を請求された
・食費を負担していたことを証明するレシートや家計簿などは残っていない
質問
レシートがない=払っていないという理屈にはムリがあります

  法律に照らし合わせて何かを考える場合、とても大切なのが「証拠」です。A男さんは食費のレシートがないことを理由に、給食係さんが食品を負担していた証拠がない、と主張しています。一見、理屈が通っているように思えますが、実はそんなことはありません。まず、彼に言ってやりましょう。「じゃあ、A男が食費のレシートを持っていないのはなぜ?」と。理由は簡単。A男さんではなく、給食係さんが支払っていたからです。A男さんが主張するように、「レシートがない=食費を負担していない」というへ理屈が成り立つのなら、2年間の2人の食費は、いったい誰が出していたと言うのでしょう?
またA男さんが生活費の全額ではなく、「半額」を請求してきたことも大きなポイントです。この行動は、二人の間に「生活に必要なお金を分担する」という約束があったことを示すと考えられるからです。約束の内容を書いた書類など、形のある証拠がなくても大丈夫。彼の行動そのものが証拠と見なされるのです。
二人で生活費を分担する約束があり、それに従ってきちんと食費を負担してきたのですから、給食係さんは今さら家賃や光熱費を払う必要はありません。本当に家賃・光熱費の半額を負担してほしかったのなら、これまでの2年間にいくらでも言う機会があったはず。それなのに、別れ話が出たあとに言ってくるのは、自分がふられたことへの仕返しとしか思えません。常識的に考えて、彼の主張が認められることはないでしょう。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。