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法的トラブル相談室-第74回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
自分にハートの男友達の家に平気で連泊してくる彼。
こっちは浮気されてる気分なんですけど!
イラスト

  婚約中で同居しているA男が、週に3日は男友達・B男の家に泊まってきます。実はB男の恋愛対象は男性で、以前からA男に片思い中。A男にそのことを伝え、せめて泊まるのはやめてくれるように言っても、「自分にその気はないから、B男と間違いが起こることなんて絶対にない」と笑うだけ。B男との間にあるのは「男同士の友情」だって言い張るんです。でも私としては、たとえA男にその気がなくても、浮気をされているようでイヤ! 結婚後もこんなことが続くなら、結婚はやめようかとも思います。「男の友情」を理由に婚約破棄をしてもいい?

(考え中さん/24歳)

・婚約者が、週に3日も男友達の家に泊まる
・男友達は婚約者に片思いをしているが、婚約者は同性の友達としか思っていない
・ 婚約者に泊まるのはやめてくれるように言ったが、やめない
・ 浮気をされているようでイヤなので、婚約を破棄したい
質問
婚約した以上、
「誠実な行動」をとることが求められます

  「婚約」とは、「将来、あなたと結婚します」という約束であり、立派な契約の一種です。契約した以上、約束を誠実に守るのが、お互いの義務。「それなら無理もないよね」と誰もが納得できるような理由がない限り、一方的に婚約を破棄することはできません。そして法律上、婚約破棄の「正当な理由」と認められるのは、(1)精神上・身体上の欠陥があり、円満な結婚生活が送れない、(2)ほかの異性と付き合うなど、不誠実な行為をしている、(3)侮辱・暴力行為などがあった、などの場合。こうした理由なしに婚約を破棄することは不法行為に当たり、慰謝料を請求されても文句は言えません(民法第709/710条)。  A男さんの場合、(2)に当てはまるかどうかが問題。本人は「自分は<異性と付き合う>ような気持ちでB男と付き合ってるわけじゃない!」という気持ちなのでしょうが、ポイントは「浮気かどうか」ではありません。考え中さんは「B男さんの家に泊まるのはやめてほしい」とはっきり伝えています。つまりA男さんは、考え中さんが嫌がっているのを知りながら、B男さんの家に泊まっているわけです。相手が嫌がることをあえてするのは、まさに「不誠実な行為」。付き合う相手が同性だろうと、A男さん側に恋愛感情がなかろうと、(2)の理由にバッチリ当てはまるのです。正当な理由がある以上、考え中さんからの婚約破棄には何の問題もありません。それどころか、精神的苦痛を理由に、A男さんに慰謝料を請求することもできます。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。