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法的トラブル相談室-第79回-

法的トラブル
お金に仕事に恋愛問題、そんな日常のトラブルを解決する法律のなるほど。後藤弁護士がズバリ解決!

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質問
知らないうちに、友達の借金の保証人にされていた私。
サインも押印も、してないんですけど!?
イラスト

  ローン会社から、いきなり身に覚えのない請求が来ました。問い合わせてみたら、なんと私がA子の借金の保証人になっている、って言うんです。A子に聞いたら、「絶対に返せると思ったから、名前だけ借りるつもりだった」と白状しました。別の友達のB美が私のふりをして書類にサインし、印鑑を押したというんです。でも私、何も聞いてないし、サインも押印もしてない! まさか、私に支払いの義務はありませんよね? 保証人になるとしたら、私のふりをしたB美ですよね?

(はん子さん/24歳)

・A子の保証人として、ローン会社から借金の返済を求められた
・ 保証人を頼まれたこともなく、契約もしていない
・ A子の友人が、自分の名前を使って保証人の契約をしていた
質問
保証する意思も行為もないので
保証人としての責任はありません

  借金の保証人とは、債務者(お金を借りた人)の返済が滞ったとき、その人に代わってお金を返す義務を負う人のこと。保証人と認められるためには、保証人となる本人が、ローン会社との間に保証契約を結ぶ必要があります。この保証契約を証明するのが、署名または押印のある契約書です。
でも、今回のケースでは、はん子さんに返済の義務はありません。もともと保証人になる意思はなく、実際の契約もしていないわけですから、責任を問われるいわれはありません。ローン会社は契約書を理由に、はん子さんが保証人であると主張するでしょうが、ローン会社は意思確認したのでしょうか? してなかったとすれば落ち度があります。契約書の署名も印鑑もはん子さんのものであることを証明できない限り、ローン会社とはん子さんとの間の保証契約は無効になります。
なお、B美さんが契約書にニセのサインをしたことは私文書偽造(刑法第159条)にあたります。もちろん、B美さんにニセのサインをさせたA子さんも共犯です。また、他人の名前を使ったとはいえ、契約書に署名・押印したのは保証人になる意思があったからだと見なされ、B美さんが保証人としての責任を負うことになるかも。B美さんに支払い能力がなく、A子さんも最初からそれを承知していた場合、ローン会社をだましたことになり、詐欺罪(刑法第246条)に問われる可能性もありますが、ローン会社にも意思確認を怠っていれば過失があります。

質問
弁護士・後藤法律事務所所長
後藤 邦春

裁判官を15年間務め、1989年より民事専門の弁護士に転身。帝京大学にて法学・労働法の講師を担当するなど、若い女性の「法的トラブル」相談者として活躍中。ペットは猫派。