第2回
220個のバーガーよりも風俗を選ぶオトコの心情
仕事で体験取材だのハメ撮りだの、さんざんやっている僕ですが、自腹でもよく遊びに行きます。やっぱね、仕事で行くのって、たとえプレイ内容が全く同じだとしても、イマイチ楽しみ切れないんですよね。もちろんちゃんとお金払って遊びますよ。 割引チケットなんかを持参したりして(笑)。
都内だと45分13000円くらいが相場でしょうか。ハンバーガー1個59円、牛丼1杯280円のデフレな世の中で、決して風俗の料金は安いもんじゃあ、ありません。でも、僕らは220個のハンバーガーよりも、風俗に行くことを選ぶのですよ。
さて、どうして僕らオトコは風俗に行くのでしょうか。単にヌキたいからではありません。それだけなら、自分でヌケばタダでスッキリできます。でも、ハンバーガー 220個分の料金(しつこいっすね)を払ってでも、遊びに行くのですよ。それは、ヌク以外の何かを風俗に求めているからなんです。
よく聞くのが、話をするだけで、何もしないお客さんの存在。意外なくらい多いんですよ。高い料金を払っておきながら、プレイもしないで、もちろんヌキもしないで、女の子とお話するだけで帰って行くというお客さん。
常連になってくると、エッチな行為よりも、その子のキャラ自体が好きになってくるんですね。カラダよりもココロといえばいいのかな。あの子とエッチしたい、というよりも、あの子と会いたい、あの子と話がしたい、という感じ。
もともと風俗嬢と常連さんの関係って、不思議なところがあって、長くなってくると「擬似恋人」というよりも「友達」っぽいノリになってくるんです。そうなると、エッチするのが妙に照れくさくなっちゃう。夫婦でもそういうことってありますね (笑)。
女の子と、ただ話して楽しいというなら、キャバクラの方が安くていいじゃないかと思うかもしれませんが、キャバクラってどうしても口説いて、最終的にはエッチに持ち込みたいという欲望のシステムがベースにあるから、素直になりにくいんですね。オトコとしてはつい、カッコつけちゃう(笑)。その点、ヘルスとかイメクラだと最初からエッチしてるし(本番は無いとしても)、お互いスッポンポンだから、今さらカッコつけてもしょうがないし。
ま、話だけというお客さんは極端な例なのですが、普通のお客さんにとっても、風俗に求めているものは、エッチだけではないんですね。プラス・アルファの何か。そのプラス・アルファが何なのかは、人によって違うとは思います。でも、おそらく精神的な何かであることは共通しているでしょう。
「この仕事をやっていて、一番嬉しいのがお客さんに『ありがとう』って言われることなんですよ。テクニックが上手ってだけなら、『気持ちよかった』だけだと思うんですけど、精神的にも満足してもらえると『ありがとう』って言ってもらえるんじゃないかな」というのは、某人気風俗嬢の言葉。
その精神的に満足してもらえるという部分が、細かい気配りであり、オトコを癒してあげられるようなムードなのですね。仕事のグチや人間関係のグチ(恋人や家庭のことも含む)なんかも聞いてあげたりするわけです。聞き上手ってのも、人気風俗嬢の条件のひとつだと言います。だからお店で人気ナンバーワンの子というのは特別にルックスがいいわけではなく、どちらかというと地味なタイプが多いと聞きます。気配りが上手で、オトコをほっとさせてくれるような女の子。アイドルのように可愛くて、スタイルもよくて、という子よりも、性格美人が支持されているのです。可愛い子は一度遊べばいいけれど、常連になって何度も通うには、やっぱり性格のいい子ってことです。
オトコであり客でもある僕が言うのも何ですが、割とオトコというのは単純です。女の子のちょっとした、ほんのちょっとした気配りで、すごく嬉しい気持ちになっちゃうもんなんです。で、その気配りってのは、お仕事意識から少しはみ出すようなこと。それは、帰り際の自然なキス(わざとらしくなくて、『ね、キスしたくなっちゃった』とかの言葉を添えると最高)だったり、お客さんが脱いだ靴下を丁寧に畳んだりとか、そんな程度のことでよかったりするんです。それだけで癒されたりするんです。
ね、オトコって単純でしょ(笑)。でも、そうやって身もココロも満足したプレイの後って、13000円も安かったと思っちゃうモンなんですよ。220個のハンバーガーよりも、40分のプレイを選んでよかったなって気分になるのですよ。
願わくば、毎回そんな気持ちで帰ってきたいなぁ。既に働いてる皆様、よろしくお願いしますね(笑)。
撮影/安田理央
安田理央(やすだ・りお)
1967年生まれ 埼玉県出身 美学校考現学研究室卒業。
雑誌編集プロダクション勤務、コピーライター業を経て1994年よりアダルト系フリーライターに。得意なジャンルは、風俗、AV、デジタルエロ、マンガなど。現在、『デラべっぴん』(英知出版)、『BUZZ』(ロッキングオン)をはじめ多数の雑誌でコラムを連載中。著書に『OPEN&PEACE 風俗嬢ヴァイブス』(メディアックス)など。またAV監督、デジタルカメラマン、バンドのボーカリストなどとしての顔もアリ。妻子もアリ。