男性向けの風俗雑誌を開いてみて、「うわぁ、こんなに風俗店ってあるのか」と驚いたことありませんか? 一説によると都内にある風俗店は5000軒以上。それぞれに10人づつの女の子が在籍しているとして約5万人。都内だけで5万人の風俗嬢がいるということになります。5万人という数字がピンと来ませんか? ええとですね、都内在住の20代女性の総数が約100万人です。単純計算してみると、東京に住んでいる20代女性の20人に1人が風俗嬢ということなんですね。
実際には、18歳、19歳の風俗嬢も30歳以上の風俗嬢もいっぱいいますし、近県から都内に通っている風俗嬢だってたくさんいると思います。でも、ま、ざっくりした数字としては、そう間違っていないでしょう。
20人に1人ってのは、すごいですよ。例えば電車の一両に若い女の子が20人くらい乗っていることは珍しくないでしょう。そうしたら、そのうちの1人は風俗嬢という確率ですから。
しかも、これは現時点で風俗店で働いている女の子の数字。働いたことのある女の子のことを考えると、おそらく経験者は倍以上の数字になるでしょう。半年くらいで入れ替わっていくのがこの業界の常識ですからね。となると10人に1人以上! こうなってくると、風俗経験者という女の子は、たいして珍しい存在ではないということになりますね。しかも風俗のことは隠している子が多いですから、実際に周りにいてもわからないんですよね。姉妹同士で、風俗やってることをお互い隠していてずっと気づかなかったって話もあるくらいですから…
さらにAVモデルの数をここに足してみたらどうなるでしょう。現在モデル事務所の数は150社以上と言われていて…。うわぁ、ハダカ仕事していない女の子の方が少ないんじゃないかというような、オソロシイ数字が出てきちゃいそうですね(笑)。
実際に風俗店に入ってみたら、働いているのが普通の子ばかりでびっくりした、という話を当の女の子からよく聞きます。そう語る女の子も、たいてい普通の子タイプ。どんな基準で普通と普通じゃないかを区別するのかってのも難しい問題ですが、ま、派手で、だらしないタイプってのが、世間が考える一般的な風俗嬢のイメージでしょうか。もちろんそういう風俗嬢も多いんですけど、別に風俗をやっていない子でもそういうタイプ多いしなぁ、今は。いわゆるギャル系の子なんて、昔の人の目から見れば、みんなパンパンだろうし(笑)。あ、パンパンってのは娼婦のことですよ、念のため。もう「普通 の女の子」ってのが、どういう子なんだか、よくわかんなくなってきてるんですよね。その一方で、「風俗嬢らしくない風俗嬢」ってのも、どんどん増えているわけですよ。「風俗嬢っぽい女の子」が風俗嬢になるというわけじゃないんですね。どんな子にも、チャンスは平等。チャンスってのも変か(笑)。
僕は極論として、「今、風俗やAVをやっていない子は、たまたまやっていないだけだ」なんてことをよく言います。風俗嬢やAVギャルに話を聞いていると、この考えを裏づけてくれるような発言が多いんですよね。
彼氏に振られてとか、会社を辞めてとか、煮詰まったりヤケになったりしてる時って誰にでもあるわけじゃないですか。スカウトの人ってのは、そういう状態の女の子を見分ける嗅覚があるんでしょうかね。
「いつもだったらスカウトが声をかけてきても無視するんだけど、その時はつい話を聞いちゃったんですよね。もう会社を辞めようと思ってた時だったんです」
と話してくれたのは、某AVギャルです。セックスはちゃんとつきあった彼氏としかしないという子です。当然仕事を始めるまで、体験人数も片手くらいと少ないもんでした。それが、タイミングよく(悪く?)スカウトされちゃったおかげで、今や月に10本以上撮影する売れっ子モデルですよ。でも未だに仕事以外では、彼氏としかセックスはしないそうですけど。
「もし、あのタイミングじゃなかったら、絶対にこの仕事ってやってなかったと思うんですよね」
こういう話、ホントによく聞くんです。すべてはタイミング。そう考えると、「今、風俗やAVをやっていない子は、たまたまやっていないだけだ」という、僕の言葉もリアリティを持って聞こえてきませんか?
正直、極論だとは思ってないんですよ。だって、ホントにそうなんだもん。
撮影/安田理央
安田理央(やすだ・りお)
1967年生まれ 埼玉県出身 美学校考現学研究室卒業。
雑誌編集プロダクション勤務、コピーライター業を経て1994年よりアダルト系フリーライターに。得意なジャンルは、風俗、AV、デジタルエロ、マンガなど。現在、『デラべっぴん』(英知出版)、『BUZZ』(ロッキングオン)をはじめ多数の雑誌でコラムを連載中。著書に『OPEN&PEACE 風俗嬢ヴァイブス』(メディアックス)など。またAV監督、デジタルカメラマン、バンドのボーカリストなどとしての顔もアリ。妻子もアリ。