第37回 あゆさん(23)
生年月日:1983年12月2日
年齢:23
趣味:映画鑑賞
お仕事歴:2年
出勤:4日/週
月収:50~60万/月
所属店舗:高田馬場サテンドール
http://www.satindoll.jp/
「超ソフトサービスなので未経験でも安心してお仕事していただけます。一日、土日のみ、短期のお仕事も可能です。自分のペースでお仕事が出来るお店ですよ」
働き始めたキッカケは、当時の彼氏への復讐
●お仕事を始めたきっかけは?
「専門学校行ってたんだけど合わなくてやめちゃって。そしたらスカウトされて、女のコ同士派閥がないところで、1日最低3万は稼ぎたいって条件付けたら、それなら風俗だねって」
●専門学校やめてやりたいことってなにかあったのかな
「映画とか音楽が好きだから、そういう方面にいけたらいいなって考えてたけど……。そのときの彼氏と上手くいってなくて、もう人生どうでもいいわ……って思って始めたのもあるな。ていうか、復讐?」
●復讐!?
「浮気してたのバレバレで、それの仕返し。私、倍にして返したいタイプなんです(笑)」
●で、彼には復讐出来たの(笑)?
「帰りが遅くなったり連絡が少なくなったりした辺りで気付いたみたいで、最近おかしくね?って聞いてきたからバラしてやった。ふざけんなよってどっちがふざけてんの?ってハナシで」
●どうして浮気してるってわかったの?
「だって電話がかかってきたらソソクサといなくなるし、寝てるときにケータイ見ようとしたらロックされてるし。でも暗証番号わかってたから解除したらご丁寧に写メまでしっかり撮ってあって。ほう~~~~~~~~んって(笑)」
●喧嘩にはならなかったんだ?
「怒り狂ってたけど、すぐにアタマ切り替えた。殴ったって傷なんか治るじゃない?それだったら精神的にやってやろうと」
●そんな男さっさと別れちゃえばいいのにー。時間の無駄じゃん。
それじゃあ私の気が済まなかった。しかも何度も同じこと繰り返してたから。男だってイタイでしょ?2年も付き合った女が風俗やってたなんて」
●その男とはそれで終わったのね。
「俺も更生するからお前も辞めろよ、ってハナシになったけどもうウンザリ。ざっくり捨ててやりましたよ」
落ち込んでいたときに救ってくれたのが次の彼
●ところで風俗業界ってどんなイメージだった?
「気取ってる人たちの固まり。問題を抱えてる人たちの集まりっていうイメージ。でも実際働いてみたらそんなことないし、恋愛でも仕事でも純粋なんだなって。今も昼の仕事してるからわかるんだけど、昼のほうがエグいいじめをする。こっち(風俗)は何かあれば直接言ってくるから、こっちのほうが裏表がなくていい」
●仕事内容は楽だった?キツかった?
「初めはなんともなかったんだけど……あるとき突然、なんでここで働いたんだっけ?男と別れたのにどうしてまだやってんだろう?ってウツ状態になっちゃって。仕事も休みがちになるし」
●落ちたときに辞めちゃおうって思わなかった?
「辞めたかったけど辞められなかった。自己暗示にかかっちゃったみたいな感じだった。何も取り柄がないって自分で思っちゃって。音楽好きなんだから、そっちをやればいいじゃんって言ってる自分と、何にも知らねぇくせにやってけるわけないじゃんって思ってる自分がいて。そういうときって自分じゃどうにもならないし、言える人もいないし。そんなとき新しい彼氏に救われた感じ。誰も、親ですら気がつかなかったことをその人は気付いてくれて」
●彼はお仕事のことは知ってたの?
「知ってた。実はお客さんだったから」
●常連さんだったのね。
「ううん。初めてのお客さん。今までそんなこと絶対なかったのに、その人にはアドレス教えてもいいかなって。この感覚はなんだろう?って思って教えたら、『何か抱え込んでるだろう』ってメールきて」
●それからお付き合いが始まったんだ。
「風俗は辞めなよ、って言われたから普通にバイトしてた。ビデオレンタルショップで働いたりしたから、自分の望む仕事には近くなってたんだよね。その間の3年は丸々ブランク」
●で、なぜに戻ってきてしまったのかしら?
「それが……。彼が実家に帰るっていうからついていったの。そしたらね、ヤツの正体は極度のマザコンだったの!」
●ほえ~……マザコンってどの程度?
私ここ行きたい、じゃあ母さんに聞いておくよ。ハ!?でしょ?お母さんも一緒に行くの?ってなるでしょ?何でもかんでもお母さん。半年頑張ってみたけどこれはちょっと無理だわ、と思って東京に帰ってきた」
●東京にいた頃は気がつかなかったの?
「そんな雰囲気まったくなかったの!本当にしっかりしてたしさ。私なにやってたんだろ~って思ったら、反動で遊びまくって。そしたら借金が山盛り(苦笑)。あと、どんだけキツくても親に仕送りはしてたから、それもちょっとあるかも」
●偉いっ!!今もそれは続いてるの?
「昼の仕事の給料は全部ママに渡すようになってる。入金口座もママ名義の通帳にしてるし。こっち(風俗)で稼いだ分は自分のお金と借金の返済」
●このお仕事がすごく楽しい~ってわけじゃないんだ。
「仕方なくやってるところがあるから。あと30万頑張らなきゃ」
両親の離婚で気付いた「男の浮気癖」
●あと30万なんだったら、もうゴール見えてるじゃん!
「って思うでしょ?ママの仕送りとお出かけでかなり出てっちゃう。ママが旅行したいわ、ってポツッと言ったら頑張って20万出しちゃう」
●ママ、お仕事のことは知ってるの?
「キャバって言ってある。ママも昔キャバで働いてたみたいだから、そこまでは目をつぶってくれてる。けど風俗なんてとてもとても……」
●パパは?
「離婚してからママと二人。それもあるのかな?男は浮気するもんだって。私の男性像ってかなり悪いよ。23年間男を信じたこと、一度もないもん」
●じゃあさ、あゆさんの「男を好きになる」ってどういうことなの?
「好きになったから付き合うんじゃないの。付き合ってるうちにこの人いいかなって。好きになったら逆に付き合えないよ。コクれないしコクられても断っちゃう」
●えっ!?どうしてさ~??
「最初だけだよって思っちゃうんだもん。好きだったのにボロが出て嫌いになるのイヤだもん。その分ママとの関係が強いんだと思う。歳も近いし、感覚も似てるし」
●女手ひとつであゆさんを育ててきたんだね。
「昔はトラックの運転手だったんだ。毎朝2時に出かけて夜12時に帰ってくるような生活。中学くらいまでは本当にひとり暮らしに近かった。ママには感謝してて、それもあって昼のお金は全部ママに渡してる。ママが何かしたいって言うなら叶えてあげたい」
●ママに仕事のこと知れちゃったらかなりマズいよね。一緒に住んでるんでしょ?
「どうしようね?かなりヤバイ!何回かバレそうになったこともあるんだけどくぐり抜けてきたし」
●逆に正直に言っちゃうのはどうなの?
「さりげなく話を振ってみたんだけど、それはちょっとね~って感じで」
●ところでお休みの日は何してるの?
「ママ(笑)。23にもなってママと遊んでる。友達みんな結婚しちゃったし」
●早くない!?
「デキちゃった婚ですよ。一番仲よかったコもけんか別れしてそのままだから友達いないの(笑)」
険しい山を乗り越え、今「ナンクルナイサ」
●ところで、残りの借金30万、払い終わったらどうする?
「まだ辞めないと思う。貯められないなんてバカバカしいじゃん。最低でも100万は貯めてから辞める」
●辞めたあとって考えてる?
「結婚するならするし、妊娠してたら産むし。そんな感じでしか今はないかな?」
●あゆさんにとって結婚って?
「別に……書類的な感じ」
●愛情がなくても書けちゃう?
「書ける。将来的なことも考えて、この人の収入だったらまあいいかって。生理的にイヤじゃなかったら結婚出来る。目が大きいことが条件ってだけ。子供のこと考えると遺伝子は大事だし。子供はすごい欲しい!」
●ベタベタにかわいがりそうだねぇ(笑)。
「私の子供だったら絶対そうなる!ママの子供の子供だしね」
●結婚して子供が出来たら今よりもっと友達付き合いって遠くなるし、ママだって永遠に一緒にいてくれるわけじゃないからさ。そんなときにあゆさんの心のよりどころがなくなっちゃわないかな?
「ママが生きててくれてるっていうだけで、子供がいてくれるっていうだけで多分大丈夫。前にひとりぼっちだったときはママにまで背を向けてたけど、今はそんなことしたくないし。だから不安はないよ」
●険しい山を乗り越えて強くなった感じがするね。
「一人っ子だったせいか私に聞けば何でも答えを出してくれるって、まわりのコは思ってるみたい。でも私が相談出来る相手はいなくって」
●それってキツくない?
「正直キツい。だけど最近覚えたのが『生きてればどうにかなる』ってこと。これも少し耐えればどうにかなるよって。昔はどうにかしなきゃ!って、そうしないと解決出来ないって思ってたけど、今はこれを乗り切ればどうにかなる、大丈夫って思えるようになったの。『ナンクルナイサ』なんだ」
●いい言葉だね。
「仕事もそうだし、借金だって1万円ずつでも返していけばいつかは終わるでしょ。だから、ナンクルナイサ!」
●じゃ、お仕事辞めるときに未練とかってのは……
「ない!ただ、スタッフがいい奴らだから離れるのはちょっと寂しいなと思う。スタッフに恵まれてなかったら今頃またウツになってる。本当にいい奴らで、私もこのスタッフにはいろいろ言えるから……奴らには言わないけど感謝してるんだ」
●では最後に。3年後はどうなっていたい?
「自分の中でキラキラしていたい。今は濁ってるかな(苦笑)。自分も幸せになりたいけど、落ち込んでるコがいたら引っぱり上げてあげられる人間になっていたいかな」