聞き書き彼女たちのセックス

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CASE 07-4/4
高田 佳子(36歳)
化粧品販売 和歌山県出身
「今日はやってもいいよ」。その余裕が女を綺麗に見せる
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 でも不思議とお客さんがついて。クビにならなかった。そういう風俗嬢が珍しかったのかもしれないですね。お客さんには恵まれましたよ。そう、私いい出会いにいっぱい救われてるの。それはこれから話します。

 父はね、その後病院から出てきて、別の事業を計画して、まただまされて。その時は200万の借金でしたけど、それも返してあげたんです。父は死にそうだったときに一度だけ『すまなかった』って言ってましたね。でもなんか、うちの家族って薄いの。普通そこでわんわん泣くじゃないですか。でも私も『フーン』て感じだし、向こうも本当に最後に一言しれっと言っただけで死んじゃって。本当にすまなかったと思ってんのかって感じ。

 母もね、その後病気になって。ICUに入ったとき、週に48万とかの請求が来て。そんなの払えないですよね。その頃は銀座のクラブに移ってたんで、お金もそんなにないわけだし。でも困ったなー、って思ってたら、お客さんのお金持ちの人が『一緒に暮らそう』って。フーンと思って家に行ったら、一人暮らしなのに、10LDKとかなの、都内で。家賃払えないから、しばらく居候して助けてもらったんですよね。それで母はなんとか面倒みてやれた。でも、本当にお金はすってんてんになったんで、その彼に言ったんです。『私、あんたに何かあったら路頭に迷うから、保険金の受取人になりたい』って。そしたら『籍でも入れるか』って。そして結婚。それでみんななんとかなっちゃったの。母親も死ぬまで面倒みてあげられたし。私、いつも人に恵まれるんですよ。だからどんな時もいつも幸せ。

 人生っていい時も悪い時もあるじゃないですか。それは当たり前なんで。昼と夜みたいなもんなんですよ。調子の悪いときは『今は夜、今は雨。でもいつか晴れる』って思えば、なんのことはないんですわ」

 なんという素晴らしい人生哲学! 私は凄く感動した。でも彼女の人生これで終わらない。

「じゃ、今はその人とお幸せに?」そう聞く私に彼女は答えた。

「それがね。彼とは結局5年一緒にいたんですけど、2年目くらいからお互い飽きてきちゃって。私はその間に向こうのお父さんの介護とかしてあげられたんで、思い残すこともないんですけど、まあいずれ別れようねって。でも私、今行くとこないから、次の男ができるまで養ってって話してたんですよ。そしたら、製薬会社に勤める4つ年下のサラリーマンと出会ったんで、一緒に暮らすことにして、離婚して今は彼と暮らしています」

 なんとも見事な女の転身である。苦労を苦労と思わないで人のために献身できる、彼女の人徳というほかないだろう。

「子供はね。私たくさん病気してるんで、無理だと思ってます。でも、それでいいって言われて。また結婚するかな。今度何年もつかわかりませんけど、私嘘がつけない人だから。飽きたらまた同じこと繰り返すでしょうね。でもいつもなんとかなったから、これからもそうなると思ってます」

 最後に彼女は夢を語ってくれた。

「いつか本が書きたいの。自分の人生で考えたこと、本にして残せたらと思ってる」

 応援してるよ! 私は本当にすっきりとした気持ちで、彼女と別れた。

 
(文中はすべて仮名です)
2003.12.19up
■さかもと未明プロフィール
OLから漫画家に転身。愛と性を生涯のテーマに、コミックのみならず、ルポ、エッセイ、小説と活動の場を広げる。現在、『SPA!』(扶桑社)、『ViVi』(小学館)、日刊スポーツ新聞などで連載を持つかたわら、TVにも出演。多忙な日々を送っている。