今の彼女とのセックスが一番
──SMぽいのは基本的に好きなんでしょうね。
「好き好き。一度そういうことに共通の興味がある彼女がいたことがあって、二人して一緒に女王様に責めてもらったの。それがすごく楽しかった。でも、どんな体験より、今の彼女とのセックスが一番です。彼女とはもう一緒に暮らしてるんですけど」
──どうやって知り合ったの?
「インターネット掲示板で、レズビアン&ゲイの映画祭に行く人を募ったんですよ。7人集まって映画に行って、そのうち5人と食事に行って、盛り上がって王様ゲームとかして。で、セックスフレンドになろうってことになったのが彼女でした。自然と恋愛関係になって。青学の短大出て、今は商社で経理やってます。28歳。とってもきれい」
──日本ではまだビアン同志の結婚はできませんけど、将来は?
「ていうか、もう家族みたいな感じなんです。私の弟は、私の性癖知っていますし。彼女は両親をもう亡くしていますし。このまま行けばいいと思ってます」
──素敵。彼女とのセックスはどんなところが素敵? 女同士だと、いつまでも終わらないんじゃない?
「実はそう(笑)。男の人とだと、きっと男の人が終わったら終りなんですよね。でも女同士だと、自分がイッたら相手にお返ししたい。で、向こうもそう思うわけですから、どこまでもしちゃうんですよ。
彼女はね、普段はしっかりしてるんだけど、オッパイ星人で、わたしのオッパイが好きで、すごく甘えてくるの。それがすごく嬉しい。私たち、甘やかしプレイが好きなんです、お互いに『お母さん』なんて言って甘えにいって、片方は子供になってごろごろする。
(いわゆるタチとネコは)固定してません。その時の気分でお互いに。だから不満ないですよ。多分向こうも満足してくれてるんじゃないかなあ。力関係がいい具合に逆転するのっていいと思う。あ、それとね。お互いの足にマニュキア塗り合ったりとか。好きなんです。そういう時、女の人とつきあえるのって、本当に幸せだと思う。女って、なんて綺麗なのかしらって」
彼女と私はくっついている
素敵だなあ、幸せなんだなあ。ほんわかした気持ちで彼女を見ていたら、彼女の携帯が鳴った。取るなりメイミーの声が甘え声になる。彼女からのようだ。
「うん。もうすぐ帰る。9時には終わるって。え? お腹すいた? そしたら冷蔵庫にイワシあるから食べてて。レンジであっためて。うん。もうすぐだから」
電話を切ったメイミーに、ああ、じゃあ早く帰ってあげてね、と私は言う。羨ましい。エロスと家族を同じ人から手に入れられるなんて。それが一番の幸せだと私は思う。今はみんなそれが分裂しているから、嘘もつかなきゃいけないし、夫婦がみんな抱き合わない。抱き合っても、喜びがない。
メイミーは上着を着て、じゃあ、と席を立った。愛する人の元に帰る彼女は本当に幸せそう。うきうきしている。イワシの晩ご飯、いいな、おいしそう。そう思っていたら彼女が思い出したようにつけ加えた。
「あのね。吸い付くように舐められるのが好きなんです。クリトリスと尿道を一度に吸い付くように。そこを口に含まれているのが好き。彼女のそれが本当に気持ちよくて、そうしていると、彼女と私ってくっついてるんだなって、本当に幸せなの」
メイミーが去った後の新宿のホテルの部屋で、私は夜の歌舞伎町のネオンを眺め下ろしている。日本で一番猥雑な町。どんな刺激的な体験だってできる。でも、それだけじゃきっと人は満たされない。それ以外に、家族の待つ帰る家を手に入れられたらいい。イワシを食べて待っていてくれる相手がいたらいい。メイミーはもしかしたら、眼下に広がるネオンの中の誰よりも、官能の喜びを知っているのかもしれなかった。なめくじみたいにぽってりと、とけちゃうような官能の香りが、なんとなく部屋に残っていた。
(文中はすべて仮名です)
2003.12.26up