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第8回 摂食障害
「スタイルがよくなりたい!」と思うのはあたりまえ。
でも、過激なダイエットは、心も身体もむしばむ「摂食障害」を引き起こす原因に……。
やせてさえいれば、本当に美しいといえるのでしょうか?
監修/榎本稔(榎本クリニック)
イラスト/トシダナルホ
人が生きていくうえで、絶対に欠かすことができないのが「食」。
そして、おいしいものを食べるということは、毎日の活力や楽しみにも値するはず。
そんな、人間にとって大切な「食べる」という機能が異常をきたしてしまうことを「摂食障害」と呼びます。
摂食障害の症状は「拒食症」と「過食症」の2パターン。
ただし、拒食症から過食症へ移行したり、その逆もよく見られるため、簡単に判断することが難しく複雑です。
●拒食症
食事を極端に制限したり、まったく摂らなくなってしまう。
体重が増えるのを恐れ、食べたものを吐いたり下剤を使用するなどの行動をとることも多い。
まわりから見ればやせているのは明らかなのに、本人はそのことに気づかない。
●過食症
通常の食事の量とは異なる、大量の食べ物をひたすら食べまくる。
特に食欲を感じなくても、食べることをやめることができない。
拒食症のようにおう吐や下剤を使うこともあり、体形が変化しないのでまわりに気づかれにくい。
摂食障害にかかりやすいのは、圧倒的に10代半ばから20代頃の若い女性。
この時期は自分の容姿に関心を抱きやすい年頃。
「やせていればいるほど、キレイでカッコイイ」という間違った思い込みにより、過剰なダイエットを行った結果によるものが多く考えられます。
また、ストレスも大きな原因。
人間関係がうまくいかなかったり、仕事への不満など、毎日の生活の中で生まれるストレスを上手に発散することができず、過食や拒食に陥ることも。
□買い物のために、人にお金を借りたことがある
●摂食障害にかかりやすいタイプ
・まじめで頑張り屋
・まわりを気にする
・完璧主義
・潔癖性
摂食障害の影響は、目に見えてわかりやすい体重の増減ばかりではなく、実際は、身体のさまざまなところに大きな悪影響を及ぼし、死に至ることも珍しくありません。
▼生理不順
急激な体重の変化により排卵のリズムが崩れ、生理不順を引き起こしたり、生理が止まってしまうことも。
▼肌荒れ、むくみ
おう吐を繰り返すことで、顔はむくみ、肌はパサパサに乾きツヤが失われる。
また胃酸により歯がボロボロに……。
▼倦怠感
食べたものを吐いてしまえば、当然身体は栄養不足。
そのため身体は常にだるく、倦怠感でいっぱいの状態に。
▼不整脈
過食、拒食に
自分が摂食障害だと感じたら、一人で病気を抱え込まないこと。
まわりの人や精神科医に日頃感じている悩みや不安を相談し、気持ちを安定させることで病気が快方へ向かうことも考えられます。
また、急いで治そうと焦ってしまうのはNG。
拒食症の場合、まずはおう吐をやめ、好きな食べ物から少しずつ食べ始める、過食症の場合は、食料を買いだめしない、軽い運動で気分を紛らわすなど、できる範囲から回復できるように努めること。
無理をせず、時間をかけてゆっくり治療を進めることが大切です。
私の妹が拒食症のようです。
日に日にやせていくのがわかり、とても心配です。
どのようにアドバイスしてあげればよいのでしょうか。
拒食症はまわりが心配になるほどやせていても、本人はそれに気づいていなかったり、満足している場合があります。
口うるさく「食べなさい」と言うのは逆効果。
それよりも、何でも話せるような環境をつくってあげましょう。
そして、症状がひどくなる前に精神科医のカウンセリングを受けさせる必要があります。
心療内科医
榎本 稔
1月11日生まれ。東京医科歯科大学医学部卒、医学博士。日本外来精神医療学会理事長。成増厚生病院副院長、東京工業大学保健管理センター教授を経て、榎本クリニックを開業。 榎本クリニック/電話 03(3982)5321