新ガールズクリニック

どんなお仕事だって、資本は自分。からだとこころの気になるお悩み、ガールズクリニックで解決しちゃいます!

バックナンバー

新ガールズクリニック

第23回 PTSD(心的外傷後ストレス障害)
タイトル戦争で心も身体も傷ついた兵士の後遺症として、認識されるようになったPTSD。
大事件や大災害が相次ぐ日本でも、PTSDに苦しむ人はたくさんいます。
では、PTSDとはどのような症状が表れる病気なのでしょうか……?

監修/榎本稔(榎本クリニック)
イラスト/トシダナルホ

トラウマによって表れる障害。
『PTSD』とは

PTSDは、正式には「Post-Traumatic Stress Disorder」といい、「心的外傷後ストレス障害」と訳されている心の病気です。
ニュースなどで、この病名を耳にしたことのある人もいるのでは?
この病気は、自分や自分の身近な人が、生命の危険を感じるほどのショッキングな出来事に遭遇したことがきっかけで起こる障害のこと。
人はこのような体験をすると、心に大きな傷や強いストレス(トラウマ)が生じます。
そしてこのトラウマによって、思い出したくないはずのつらい体験が同じような苦痛を伴ってよみがえったり、イライラして怒りっぽくなるなど、さまざまな障害が繰り返し表れます。
トラウマの大きさによっては、社会生活を正常に営むことが困難になるほどひどいPTSDを患うケースも。
日本では、話題にされることが少なかった病気ですが、「地下鉄サリン事件」や「阪神淡路大震災」など、大事件や大災害を体験した人の後遺症として知られるようになりました。

それぞれにあるトラウマ発症の原因。
その中で共通する『ショッキングな出来事』

PTSDの原因であるトラウマは、人によって実にさまざまですが、これまで経験したことのないような、激しい恐怖や悲しみといった精神的ショックによって生まれることが多くあります。
自分の体験だけでなく、第三者の体験を自分のことのように感じてトラウマとなることも。

【トラウマの原因1】
ショッキングなできごとを自分が体験した
事件や事故、災害などに巻き込まれ、生命の危険を感じるほどの恐怖や不安を味わったために発生。
女性であれば、性犯罪の被害者にPTSD症状が見られるケースも多い。

【トラウマの原因2】
ショッキングな出来事を身近な人が体験した
家族や恋人、親友といった自分の大切な人が危険な体験やショッキングな出来事に遭遇したために、身近にいた自分も同じような苦しみやつらさを感じ、痛みを共有してしまう。

【トラウマの原因3】
ショッキングな出来事を目撃した
直接自分が被害を受けたわけではないが、悲惨な事故や犯罪現場を目撃してしまったなど、偶然衝撃的な場面に遭遇したことによりトラウマが生じることも。

1ヵ月以上続いたら注意!
PTSDの3つの主要症状

■侵入
・ショッキングな体験が鮮明によみがえり、同じ場面が再び起こっているような錯覚に陥る(フラッシュバック)
・ショッキングな体験を思い出させるようなできごとに遭遇すると、動悸や冷や汗が発生する
・突然興奮して、パニック症状が起こる
・ショッキングな体験が繰り返し夢に現れる

■回避、反応麻痺
・過去に経験したはずのショッキングな体験を思い出すことができなくなる
・周囲から孤立し、家から出られず引きこもってしまう
・記憶力や集中力が低下したり、何事にも興味がわかない
・感情がわかなかったり、自分が自分でなくなったような離人感が起こる

■過覚醒
・訳もなくイライラしたり怒りっぽくなる
・なかなか眠ることができず、睡眠障害が生じる
・大きな音に驚いたり、ささいなことでビクビクする
・神経が常に張り詰めて、リラックスすることができない

誰もがかかりうる病気。
一人で苦しまないで!

つらい体験をしたからといって、必ずしもPTSDを発症するとは限りません。
だからといって、PTSDにかかってしまった人の心が弱いというわけではなく、誰もがかかりうる病気ということを理解してください。
心の病気であるPTSDを治療するには、医師の診断を仰いだうえで、適切な処置が必要。
一人で苦しんでいるだけでは、病気を治癒させるのは困難です。医師のカウンセリングや、トラウマを持った人たちが集まって自分の体験を話し合うグループセラピー、薬物の処方など、症状に応じたプログラムを病院ごとに行っています。
PTSDで悩んでいる人には、親しい人との対話が有効です。
もしまわりにPTSDの人がいたら、アドバイスを与えるのではなく、聞き手にまわりましょう。
つらい体験をじっくり聞いてあげることによって、気持ちが楽になったり、PTSD症状が軽くなる場合も。
もちろん患者が嫌がっているのに無理に話を聞き出そうとするのは厳禁。

お答え

私の家の近所で、子供の泣き声や悲鳴が聞こえることがあります。
親が子供を虐待しているのではないか……と心配です。
小さな子供でもPTSDが発症することがあるのでしょうか。

新ガールズクリニック

大人が子供に虐待行為や性的暴力を行うという事件は少なくありません。
子供であっても当然トラウマが生まれ、PTSDを発症したり、自分の中に複数の人格が存在する「解離性同一障害」という症状を引き起こす場合もあります。
大人になっても、障害に苦しめられる人はたくさんいます。
子供のSOSに気づいた大人が手を差し伸べてあげることが必要なのです。

榎本 稔

心療内科医
榎本 稔

1月11日生まれ。東京医科歯科大学医学部卒、医学博士。日本外来精神医療学会理事長。成増厚生病院副院長、東京工業大学保健管理センター教授を経て、榎本クリニックを開業。 榎本クリニック/電話 03(3982)5321