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第57回 季節性感情障害
タイトル季節が精神状態に少なからず影響を与えることは、ずっと昔から指摘されていたようです。
今回は、ある時季に限り、うつ状態が表れるという季節性感情障害を取り上げます。

監修/榎本稔(榎本クリニック)
イラスト/トシダナルホ

季節性感情障害とは?

どんよりとした天気が続き、日が短くなる冬になると決まって、気がめいったり、やる気がなくなったり、かと思うと過食気味になったり……。
心身にこうした変調が見られる場合、「冬季うつ」が疑われます。

《冬季うつの特徴》
●発症年齢―20代前半
●女性に多く発症
●発症と経過―10~11月頃に兆しが表れ、1~2月頃に症状のピークを迎え、3月以降に症状は消失する。
●症状が落ち着いた直後、躁状態に陥ることも。
●うつ状態と併せて、過食、過眠、体重増加、甘い物やごはん、めん類、パンに偏った食生活(炭水化物飢餓)が起こることも。

普通のうつとはココが違う!

症状はうつ病と重なることも多いのですが、大きな違いは発症の時期が限定されている点。
もちろん、個人差もありますが、冬季に限らず秋口から春までという人もいれば、年末から2月頃までというケースもあります。
そして、夏は躁状態になるというのも特徴です。

原因と、いますぐできるセルフチェック!

日照時間の短い冬に発症率が高まることから、現段階では光の不足が原因と考えられています。

●日照時間が短い→体内時計をつかさどるメラトニンの分泌に変調が起こる。
●太陽の光を浴びる量が少ない→神経伝達物質のセロトニン不足となり、脳の活動が低下。

《セルフチェック! こんな症状が2週間以上続いたら要注意!》
□本来は、自分の好きな趣味的なこともやりたくなくなる
□明らかに集中力が続かない
□日常のふとした瞬間に悲しみがわいてきて、泣いてしまう
□自分はダメな人間だと思い込む
□朝、なかなか起き上がれない(遅刻など社会生活に支障が出るレベル)
□菓子パンやおかし、カップめんなどをいつもより多く食べるようになった
□食欲が低下したかと思うと過食もする
□体重が増えた
□不眠だけでなく、過眠もしてしまう

夏限定の夏季うつ病もある!

冬限定のうつ病に対して、夏に発症するうつもあります。
また、冬や夏に限らず、それぞれに苦手な季節があり、毎年その時季になると、症状が表れるケースも見られます。
また少数ではありますが、夏と冬の両方に発症するという人もいるようです。

治療法

現在では、「高照度光療法」が最も有効な治療法とされています。
専用の治療機器で、2500ルクス程度の高照度の光に短時間当たることで、大半の症状は改善されます

お答え

昔から、秋から冬へ移行する時季がキライで、何となく悲しかったり、寂しい気持ちになるのですが、これもうつの一種でしょうか?

新ガールズクリニック

その頃の季節というのは、曇りがちな日が多く、何となく物悲しい雰囲気がありますよね。
ただ気分的に悲しい、寂しいという程度ならば、病気ではないので心配はありません。
そこに脱力感や倦怠(けんたい)感、不眠、食生活の異変などの症状が加わると治療が必要となります。

榎本 稔

心療内科医
榎本 稔

1月11日生まれ。東京医科歯科大学医学部卒、医学博士。日本外来精神医療学会理事長。成増厚生病院副院長、東京工業大学保健管理センター教授を経て、榎本クリニックを開業。 榎本クリニック/電話 03(3982)5321