どんなお仕事だって、資本は自分。からだとこころの気になるお悩み、ガールズクリニックで解決しちゃいます！
第78回 震災ストレス 急性ストレス障害
甚大な被害をもたらした東日本大震災。
毎日テレビから目をそらしたくなるほどの映像が流れてきました。
それを見ているうちに被災地から離れた地にいながら、気分が落ち込み、眠れない、頭痛、胃腸の調子がおかしい……といった症状が。
今回は間接的に受ける震災ストレスに注目してみました。
監修／榎本稔（榎本クリニック）
イラスト／トシダナルホ
実際に被災したわけではないのに、テレビの映像を通して悲惨な状況を繰り返し見ることによって、心身がストレスにさらされ、極度の不安感、不眠、頭痛、食欲不振、動悸（どうき）、やる気がなくなる……といったさまざまな症状が表れる。
こうした状態を震災ストレスと呼んでいます。
今回の震災では多くの人が、程度の差はあるものの、自身の心身両面において何かしらの異変を感じ取っているのではないでしょうか。
日がたつにつれ、だんだんに症状が軽減されていれば、問題はありませんが、悪化しているようなら急性ストレス障害などの可能性もありますので、専門医で受診することをおすすめします。
自分のキャパシティを超えるようなストレス（自然災害や戦争、テロなど）を経験したあとに生じる心身障害。
実際には被災していなくても、今回のように映像を見るだけでも発症します。
自分や他人の命が危機に脅かされるような体験をしたり、目撃することで強い恐怖感、無力感、呆然（ぼうぜん）自失感を覚え、感情がマヒしたような感覚に陥ったり、フラッシュバックしたときに苦痛に見舞われるといった症状が表れます。
急性ストレス障害は一過性のものなので、衝撃的な出来事があってから1ヵ月ほどで回復するといわれています。
日常生活に支障が出るほどの症状がある場合は、専門医による治療が必要です。
▼何に対してもやる気が出ない
心身がストレスで疲弊している状態ですから、眠れる人はとにかく睡眠を。
そして食欲があればどんどん食べましょう。
疲れてヨレヨレのときに頑張って無理やり活動的になる必要はありません。
仕事の都合がつくようならいっそのこと、思い切って休暇を取り、怠ける1週間と決めて、心ゆくまでダラダラするのもいいかもしれません。
ただし、十分に休んだのに動きたいという気持ちが起きないときは、必ず専門医に相談を。
▼不安はおしゃべりで発散
「怖い」「悲しい」「もうこんな生活耐えられない」など、思っていることを口に出してしまうことがストレス緩和に効果的です。
感情を自分の中に閉じ込めてしまうのが一番よくありません。
素直に感情を出せる人とおしゃべりすることが最善策。
どうしても他人には言いにくいというなら、大きめの紙に今の気持ちを書いてみるのも対処法の一つです。
▼めまいや動悸、いつも揺れている気がする
症状がつらいときは、ガマンせず精神科・心療内科などを受診して、じっくり話を聞いてもらい、症状に適した薬を処方してもらうといいでしょう。
余計なガマンは禁物です。
今回の被災地の映像を見て衝撃を感じない人はいないはずです。
涙が流れてきたら、感情のまま素直に泣きましょう。
大切なのは気持ちを押し込めずに表に出すこと。
それがストレス緩和につながります。
できれば一人ではなく、友人や彼氏と一緒に共有するとなおよしです。
最近イライラがひどく、先日も一緒に住んでいる彼氏とささいなことでケンカになってしまいました。
これも震災と関係があるのでしょうか?
（22 歳・販売員）
イライラや言い争いが増えるのは、震災ストレスにおいて正常な反応といえましょう。
普段はできる感情コントロールが、うまくできなくなっているのです。
実は、ストレス緩和に感情を発散するケンカは有効です（ただし、二人の関係に亀裂が入らない程度で……）。
心療内科医
榎本 稔
1月11日生まれ。東京医科歯科大学医学部卒、医学博士。日本外来精神医療学会理事長。成増厚生病院副院長、東京工業大学保健管理センター教授を経て、榎本クリニックを開業。 榎本クリニック／電話 03（3982）5321