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- 第4回
●他者に依存する喜び 自分で獲得する喜び
前回の続きです。
表面的には同じことをやっていたとしても、人の中身は180度と言っていいくらいに違うことがあります。
「SMマトリックス」では、「私」の欲望のあり方を「他者」との関係によって区別することで、その違いを明確にすることに成功しています。
画期的です。
SMに限らず、他者の喜びを自分の喜びにするタイプと自分の喜びをそのまま自分の喜びとするタイプがいます。
また、その喜びを他者に依存する形で実現するタイプと、自分自身で獲得していくタイプとがいます。
さらに、その行動が他者とぶつかった時に、どう解決するかにも違いがあって、それらを数値化して、その組み合わせによって人間の行動原理が分類できるというのが「SMマトリックス」の基本思想です。
これによって、さまざまな人の行動の違いが論理的に理解できる。
しかも、人は全員違っているってことまでがわかります。
「SMマトリックス」はSMにヒントを受けながら、性的な場面に限らない行動一般を分類するものなのですが、性的な場面における行動も同様に分類が可能です。
といっても何を言っているのかよくわからないでしょう。
理解しにくいのが「SMマトリックス」の難点です。
●痛みを与えるだけがSの目的ではない
具体的に言えば、私は攻め好きです。
ここだけ見れば一般にはSです。
しかし、それが苦しみや痛みを与えるものにはならない。
相手が喜んでいる状態に欲情する。
したがって、ここは奉仕の快楽のようでもあって、こうなると、Mの行動です。
では、純然たる相手の快楽が目的なのかと言えばそうでもない。
苦しみや痛みを快楽にできる相手であっても、それを与えることに自分の快楽は生じない。
そのため、相手も攻めが好きだと、相手の欲望に自分を委ねることはせず、主導権争いのバトルが展開されて、これはこれで楽しい。
他者とのせめぎあいの場では、そのせめぎあいを楽しむタイプ。
文 = まつざわくれいち/1958年生まれ。『エロスの原風景』(ポット出版)、『風俗お作法』(小社)など著書多数。
イラスト = 友沢ミミヨ