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- 第15回
先日初めて会ったデリヘル嬢に「景気はどう?」とよくある挨拶をしたら、こんなことを言ってました。
「変わらずですね」
「でも、震災以降、風俗関係は全般に客が増えているとも聞くよ」
「客が増えたのは、震災の直後です。3月は忙しかったですよ」
「不安なお客さんが詰めかけて」
「その頃来ていたお客さんは、不安を解消するためだったり、話し相手が欲しくて来ていたと思うんですけど、だんだん元通りになって、今は震災前とほとんど変わらない。常連さんが戻ってきて、メンツは前と一緒です。ただ、今は、不安になると来なくなるんですよ。原発がまた危ないというニュースが流れると、パタッと来なくなる。震災直後のように、不安解消のお客さんも来ないから、単に暇になっちゃうんですよね」
その分、震災前より客の数が減っているため、全体として1割から2割減というのが彼女の印象。
この辺は地域差、店の差、個人差がありましょうけど、今までのように、不安になった人の不安を解消する接客ではなく、不安を乗り越えた人を再度不安にならないようにする接客が求められるってことか。
難しいっすね。
どんな接客なのか、私もよくわからないです。
●特上カルビを上カルビに
客の動きが読めなくなったとの話は他のジャンルでも聞きます。
以前は給料日あとに混んでいた食い物屋が給料日あとでも人が入らないとか。
知人が働く和牛専門の焼肉屋では、震災以降、売り上げは、それまでの7割で推移。
「少しはよくなってますが、元には戻らない。ユッケ騒ぎがあったことも影響しているんでしょうけど、このあと、潰れる店が出てくるんじゃないですか。ただ、超一流の店だと、さほど客が落ちていないかもしれない」
皆さん、渋くなったのです。
今まで特上カルビだったのを上カルビで我慢する。
上カルビを食べていた人は普通のカルビにする。
1万円出していた人が5千円に、5千円を出していた人が3千円に抑える。
月に3回行っていた人は2回に、2回行っていた人は1回に抑える。
文 = まつざわくれいち/1958年生まれ。『エロスの原風景』(ポット出版)、『風俗お作法』(小社)など著書多数。
イラスト = 友沢ミミヨ