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- 第26回
最終回です。
自分でも何年やっていたのか覚えていないくらいの長期連載でした。
始めた頃は、毎日のように風俗店に行くバリバリの「風俗ライター」でしたが、今はその肩書きを外して、風俗店に行くことは減り、仲の良かった風俗嬢たちも、大半は風俗業界を離れてしまっています。
女王様たちはまた別で、相変わらず、ムチをふるっている人たちが多くて、交流も続いていますけど。
数年前に結婚してデリヘルを引退したコが、つい最近、妊娠しました。
遠からず、放射能に汚染された東京を離れて、ダンナの実家に行くみたい。
彼女の夫は彼女の過去を知りません。
こういう場合は接点をもちにくい。
私と交流がある、あるいは、あった、というだけで、「なんで?」という話にもなってしまいますので。
そのため、どうしても結婚すると疎遠になってしまうものですが、元気でやっていることを知るのは嬉しいです。
よく「風俗嬢は風俗を辞めたあとどうなるのか」と質問する人がいますが、たいていはどうにもなってないです。
元の生活に戻るだけ。
あるいは、風俗以外でやりたかったことをやっているだけです。
風俗をやっていた期間は長いですが、その彼女は昼間の仕事もやっていて、そちらで知り合った男と結婚をしていますから、彼女にとっての風俗は、効率よく稼げ、なおかつ趣味と社会勉強を兼ねたアルバイトでした。
彼女は風俗の仕事を心底面白がっていたタイプで、風俗をやっていたことを後悔しておらず、楽しかった思い出になっているはずです。
あえて思い出すことももうないでしょうけど。
最近は連絡がないですが、金をもった外国人と結婚して、海外に行ったのもいます。
たぶん彼女も幸せにやっているでしょう。
浮気くらいはしていると思いますが。
今は自分の過去を晒していないのではないかと思うので、どこの誰かは内緒にしておきますが、別の業種で活躍している人もいます。
もちろん、当時の名前とは違いますが、時々名前を見ます。
もともと目的があってやっている人の中には、金を貯めてその目的を実現したのもいます。
花屋を出したり、飲食店を出したり。
文 = まつざわくれいち/1958年生まれ。『エロスの原風景』(ポット出版)、『風俗お作法』(小社)など著書多数。
イラスト = 友沢ミミヨ