松沢呉一の店外講習
風俗取材に携わって10余年。ひたすら「エロ街道」を歩き続ける著者が、お店スタッフや女の子との交流を重ねて得た、風俗業に関するさまざまな知見をここに開陳。 最終回は「個性が大事」というお話です。

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ある店のコたちに話したことなんだが、風俗嬢にとっては個性が重要になってきている時代だと思う。

新規で店を立ち上げる場合、「電車の痴漢プレイができる」「放尿プレイ用便器を全部屋に設置」「70キロ以下はいないおデブちゃん専門店」「コスチューム 100種類以上」「即尺、即クンニOK」「在籍の8割がパイパン」といったような特性を打ち出してメディアに扱われるように工夫をするが、メディア対策だけじゃなく、数ある風俗店の中でお客さんが認知するには個性が必要で、だから目立つ名前をつけ、他にないサービスを打ち出そうとする。

女のコたちにとってもこれは同じ。私らのように数多くの風俗嬢に接していると、どうしたって忘れるコはいる。一度しか会っていないのに、半年後にも覚えているコは「ずば抜けた美人」「ずば抜けたエロテク」「ずば抜けて話がうまい」「ずば抜けてオッパイがきれい」といった特性をもっているコで、「まあまあきれいで、まあまあ話が面白く、まあまあスタイルがよく、まあまあのテクニック」だと埋もれてしまうのだ。

どれもまあまあであれば、また指名して遊びに行くこともあって、そうなればより認知することにもなるのだが、一回しか会ってないと、こういうコよりも、もっと些細な特徴で記憶に残る。

たとえばプレイ中にもメガネをかけていた越谷にあるイメクラのコ。このコは顔立ちもきれいで、話のノリもよく、スケベ度も高かったのだが、それよりなにより私の中では「メガネをずっとかけていた」という事実の方がずっと印象深い。

越谷なので、気楽には行けない場所だが、メガネフェチではない私も、時々このコのことは思い出し、また機会があったら遊びに行くこともあると思う。

私は脇毛が好きなので、脇毛の生えた風俗嬢がいないかと前々から思っているが、剃り忘れてちょっとだけ生えているのはいても、黒木香のように見事な脇毛のコには未だ会ったことがない。その黒木香だって、話し方や顔の特徴とともに、脇毛で強い印象を残したわけで、脇毛を伸ばした風俗嬢だっていていいはずだ。今時、パイパンのコはさして珍しくもなく、それだけでは記憶に残らず、脇毛を生やしていた方がずっと印象深く、客も来ると思うんだがな。

あとは、即尺ならぬ「あと尺」で記憶に残っているコもいる。この日私は時間切れで射精に至らなかったのだが、服を着たあとで彼女はチ×コだけ引っ張り出してフェラをして口内発射をさせてくれた。こういうプレイがあるわけではなくて、たまたまそうなっただけだろうが、予想してなかった展開で、強烈にいやらしかった。


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  エロテクよりも、話の内容で記憶しているコもよくいる。獣医大の学生と狂牛病の話をしたり、東京芸大のコと「芸大の生徒はスケベが多い」という話をしたことを私はすごくよく覚えている。女子大生だからといって無闇に欲情したりはしない私だが、こういう特徴ある専門をやっている学生は圧倒的に有利だと思う。

もちろん相手が興味をもってくれないと単なる押しつけになるが、自分が強いジャンルをもっていて、そのことを話せば、「ゲームが好きなコ」「卓球でインターハイに出たことがあるコ」「プロなみの雀士」「スペイン語が話せるコ」「生け花名人のコ」といったように認知しやすい。「死体マニアのコ」「万引き名人」といったように認知されても指名にはつながらないかもしれないが。

あるいはプロフィール的なこと、キャリア的なことが印象に残る場合もある。「某有名企業の受付をやっていた」「昼間は商社に勤めている」「AVに100本出ている」「お父さんが元プロスポーツ選手」「高校はフェリスを卒業」「自分と同じ小学校を卒業している」「初体験の相手が70歳」といった具合。これまたネガティブイメージで覚えられるのはよくなくて、「先週まで淋病だった」とか「傷害で前科がある」というのは言わない方がいいかと思うが、「兄が刑務所に入っている」「親がヤクザ」といった話で印象に残っているコが現にいる。

お客さんの中には、最初から常連になるべき相手を探しているのと、一回こっきりのお遊びができればいいのがいて、後者の場合でも、印象に残ったコのことをふと思い出して指名することがあると思う。

これで思い出すのは「花電車」。マ×コでバナナを切ったり、マ×コに筆を入れて書道をやったり、吹き矢を入れて的に当てたりするストリップのワザだ。戦前は、行事がある度、花で装飾した電車を走らせ、これを「花電車」と呼び、「見せるだけで乗れない」ということから、そのようなストリップのワザを「花電車」と呼ぶようになったと言われるが、これは後づけで、本当は私娼街である「玉ノ井」の女が、目立つために頭に大量のかんざしをつけたことに由来する名称だ。

彼女は女学校を出ている才女で、頭はいいのだが、顔の出来が悪くて、なかなか客が集まらない。そこでかんざしをつけることで目立つことを考え、これ自体が「花電車」と呼ばれた。

さらに彼女は頭を使い、客をとらずに芸で人気を博し、この座敷芸もまた「花電車」と言われるようになったのである。

これですよ、これ。今の時代だって、マ×コにペンを突っ込んで、名刺に「また来てね」と書けば、絶対に忘れない存在になれる。キャラによっては「××ちゃんがこんなことを…」なんて退く客もいるだろうが、お笑いキャラであれば客に受けるだろう。
温泉ストリップで本物の「花電車」を見たことのない人が「本当にバナナを切れるのか」なんて興味をもって来てくれるかもしれないし、面白がって紹介してくれる雑誌もあるだろう。



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